二重価格表示とは
「二重価格表示」とは、実際の販売価格と比較対照価格を併記することにより、割引を行っている旨をアピールする表示です。例えば「定価1万円のところ、今だけ6000円」といった表示が二重価格表示に当たります。
二重価格表示は価格面でのメリットが伝わりやすく訴求力が高い反面、不適切な方法で行われると一般消費者の誤認を招く恐れがあります。二重価格表示の具体例と、二重価格表示の問題点について解説します。
二重価格表示の具体例
二重価格表示に当たるものとしては、次の表示などが挙げられます。
「通常価格1万円→特別価格7000円」
「定価5000円のところ、今だけ3980円」
「メーカー希望小売価格8000円→販売価格5000円」
「通常価格1500円→期間限定980円」
「当店通常価格2万円→本日限り1万2000円」
「旧価格1万円→新価格6000円」
「通常価格から30%OFF!7000円→4900円」
「参考価格1万5000円→セール価格9800円」
「通常料金月額5000円→キャンペーン価格月額3000円」
「通常1個1000円のところ、3個セット2000円」
二重価格表示の問題点
二重価格表示は、事実に即して適切に行われている場合は特に問題ありません。価格面でのメリットが伝わりやすいため、一般消費者に対する高い訴求効果が期待できます。
ただし、比較対照価格が不適切な形で表示されていると、一般消費者に対して「お得だ」「安い」などの誤認を与える恐れがあります。そのため、不適切な二重価格表示は景品表示法によって規制されています。
二重価格表示が景品表示法違反(有利誤認表示)となるケース
不適切な二重価格表示は、景品表示法によって禁止されている「有利誤認表示」に当たる可能性があります。
有利誤認表示とは、商品やサービスの価格その他の取引条件につき、実際のものや競合他社の取引条件よりも著しく有利であると誤認され、一般消費者の自主的・合理的な選択を阻害する恐れのある表示です(景品表示法5条2号)。
二重価格表示については、実際の販売価格と併記する比較対照価格が不適切である場合は、有利誤認表示として景品表示法違反に該当します。
二重価格表示が景品表示法違反となるケースとしては、次の例などが挙げられます。
新品と中古品の価格を比較する表示
最近の販売実績が乏しい価格と比較する表示(8週間ルールに注意)
実際には予定がない将来の価格と比較する表示
製造業者等が設定・公表したものでない価格を「希望小売価格」と称する表示
相場とは異なる価格を「市価」などと称する表示
ほとんど適用例がない「非会員価格」の表示
新品と中古品の価格を比較する表示
同一でない商品の価格を比較対照価格とする場合、販売価格と比較対照価格の価格差には、商品の品質等の違いも反映されています。そのため、価格差のみをもって販売価格の安さを評価することは難しく、一般消費者に「安い」との誤認を与える有利誤認表示に該当する恐れがあります。
新品と中古品は通常、同一の商品とは考えられません。
例えば「新品価格10万円のところ、中古品なら5万円!」など、新品と中古品の価格を比較する二重価格表示は、有利誤認表示とみなされる可能性があります。
最近の販売実績が乏しい価格と比較する表示(8週間ルールに注意)
過去の販売価格等を比較対照価格とする場合は原則として、同一の商品やサービスについて「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とすることが求められます。
比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない場合は、その価格がいつの時点でどの程度の期間設定されていたのかなどを正確に表示しない限り、有利誤認表示に該当する恐れがあります。
たとえば「値下げしました!1万円→8000円」と表示する場合は、その商品やサービスが比較対照価格である「1万円」で実際に最近相当期間にわたり販売されていたことがあるといえなければ、有利誤認表示が疑われます。
消費者庁のガイドライン(不当な価格表示についての景品表示法上の考え方)では、過去の販売価格等を比較対照価格とする二重価格表示について「8週間ルール」が示されています。
8週間ルールによれば、セール開始時から遡って8週間(セール開始前の期間が8週間未満の場合は、その期間)のうち、比較対照価格が用いられていた期間が過半を占めていれば、原則として「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよいとされています。
ただし、比較対照価格で販売されていた期間が通算2週間未満の場合や、比較対照価格で販売された最後の日から2週間以上経過している場合には、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないとされているので注意してください。
実際には予定がない将来の価格と比較する表示
「キャンペーン期間限定で今だけ8000円!(キャンペーン期間終了後は1万円)」などと将来の販売価格を比較対照価格とする場合は、その価格が十分な根拠に基づいていることが求められます。
実際に販売することがない、あるいはごく短期間のみ販売するにすぎないなど、比較対照価格が十分な根拠に基づかない場合は、一般消費者に「安い」との誤認を与える有利誤認表示に該当する恐れがあります。
製造業者等が設定・公表したものでない価格を「希望小売価格」と称する表示
製造業者等・卸売業者・輸入総代理店などの小売業者以外の者(=製造業者等)は、自己の供給する商品について「希望小売価格」を設定することがあります。
この場合、小売業者は希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う例がよく見られます。たとえば「希望小売価格1万円のところ、当店では8000円!」などです。
希望小売価格を比較対照価格とする場合は、製造業者等により設定され、あらかじめ公表されている価格を用いることが求められます。
たとえば次に挙げるように、製造業者等が設定・公表しているものでない価格を「希望小売価格」と称して表示した場合は、有利誤認表示とみなされる恐れがあります。
希望小売価格よりも高い価格を「希望小売価格」と称して表示する
製造業者等が希望小売価格を設定していないのに、希望小売価格を表示する
小売業者のプライベートブランド商品につき、小売業者が自ら設定した価格を「希望小売価格」と称して表示する
製造業者等が一部の小売業者のみに対して呈示した価格を「希望小売価格」と称して表示する
販売する商品とは異なる商品の価格を「希望小売価格」と称して表示する
など
相場とは異なる価格を「市価」などと称する表示
自社の商品やサービスの安さを強調するため、「市価」よりも安いことをアピールする表示がしばしば見られます。
「市価」とは市場における相場価格を意味すると考えられるところ、最近時の市価よりも高い価格を市価として比較対照価格に用いると、有利誤認表示に当たる恐れがあるので注意が必要です。
例えば、ある商品について「市価1万円のところ8000円」と表示したところ、他店舗においてその商品が最近8000円程度で販売されている場合は、有利誤認表示とみなされる可能性が高いと考えられます。
市価を比較対照価格として二重価格表示を行う場合には、競合他社における最近時の販売価格を正確に調査しましょう。
ほとんど適用例がない「非会員価格」の表示
「会員になれば安く購入できる」ことをアピールする二重価格表示もよく見られます。例えば「非会員価格1万円、会員価格8000円」といった表示が挙げられます。
希望すれば誰でも簡単に会員になれる場合、「非会員価格」はほとんど適用されないため、実質的には「会員価格」が定価となります。
このような二重価格表示は、実態のない「非会員価格」を示すことにより、一般消費者に「安い」との誤認を与える有利誤認表示に該当する恐れがあります。
不当な二重価格表示をした事業者が受けるペナルティ
二重価格表示が有利誤認表示に当たる場合、その表示を行った事業者は、消費者庁長官から措置命令を受けることがあります(景品表示法7条)。
措置命令の内容は、不当表示の差止めや一般消費者向けの周知、再発防止策の実施などです。措置命令を受けた事業者は、その内容に従った措置を速やかに講じ、消費者庁長官へ報告しなければなりません。
また、有利誤認表示を行った事業者は原則として、消費者庁長官から課徴金の納付を命じられます(同法8条)。課徴金の額は原則として、有利誤認表示を行っていた期間における対象商品・サービスの売上額の3%です。
さらに、有利誤認表示による措置命令や課徴金納付命令を受けた事実は、事業者名とともに消費者庁Webサイトにおいて公表されます。その結果、企業としての社会的評判が損なわれる恐れがあります。
加えて、有利誤認表示は刑事罰の対象とされており、違反した者には「100万円以下の罰金」、法人にも「100万円以下の罰金」が科されます(同法48条2号、49条1項2号)。
このように、有利誤認表示に当たる不適切な二重価格表示をした事業者は、さまざまなペナルティのリスクを負います。不当な二重価格表示をしないように、適切に対策を行ってください。
企業が不当な二重価格表示をしないための対策
一般消費者向けに商品やサービスを販売する企業は、不当な二重価格表示を行わないように、次に挙げる対策などを行いましょう。
複数人で広告等の内容をチェックする
有利誤認表示に関する従業員研修を実施する
複数人で広告等の内容をチェックする
不適切な二重価格表示を見落とさないようにするためには、複数人で広告等の内容をチェックすることが有用です。
広告内容を検討・作成する部署内において複数人でチェックし、さらに法務担当者にもチェックを依頼するなど、二重・三重のチェック体制を構築すれば、不適切な二重価格表示が見落とされてリスクを軽減できます。
有利誤認表示に関する従業員研修を実施する
不適切な二重価格表示を含む有利誤認表示につき、広告表示等を取り扱う従業員向けの研修を実施することも効果的です。ケーススタディで具体例を示すなど、従業員が実際の業務をイメージしながら知識を習得できるような内容を検討し、研修の効果を高めましょう。
二重価格表示についてよくある質問
二重価格表示はすべて違法ですか?
二重価格表示がすべて違法というわけではありません。実際の価格や競合他社の価格よりも著しく「安い」と誤認され、一般消費者の自主的・合理的な選択を阻害する恐れがある場合に限り、有利誤認表示として違法となります。
定価を値上げしてから、セールによって値下げするのは問題がありますか?
値上げ後の価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合、その値上げ後の価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければ、有利誤認表示に当たる恐れがあります。
具体的には「8週間ルール」などに留意する必要があります。本記事の「最近の販売実績が乏しい価格と比較する表示(8週間ルールに注意)」を参照してください。
「DocumentOn」で二重価格表示のチェックを標準化
「DocumentOn」は、広告・販促物の不当表示リスクをAIが自動でレビューする広告審査AIです。景品表示法の有利誤認や二重価格表示などの観点で審査します。
Word・PDF・PowerPoint・画像などをアップロードすると、要注意表現がハイライトされ、指摘の理由や根拠となるガイドライン、修正案などを確認できます。
弁護士監修の審査基準により、担当者ごとの判断のばらつきを解消することが可能。さらに、営業・マーケティング部門での一次チェックの内製化のために活用いただくことも可能です。
まとめ
二重価格表示とは、実際の販売価格と比較対照価格を併記して割引をアピールする表示です。
二重価格表示は、一律に違法というわけではありません。ただし、実際の価格や競合他社の価格よりも著しく「安い」と誤認され、一般消費者の自主的・合理的な選択を阻害する恐れがある場合は有利誤認表示として違法となるので要注意です。
一般消費者向けに商品やサービスを販売する事業者は、不適切な二重価格表示を防ぐため、複数の担当者によるチェックや定期的な従業員研修などを実施しましょう。