有利誤認表示とは
「有利誤認表示」とは、次の①~③の要件をいずれも満たす表示をいいます(景品表示法5条2号)。
商品または役務(サービス)の価格その他の取引条件についての表示である
次のいずれかに該当する
実際のものよりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示である
同種または類似の商品・役務を供給している他の事業者(=競合他社)の取引条件よりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示である
不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる
有利誤認表示は、景品表示法によって禁止されています。
有利誤認表示が禁止されている理由
有利誤認表示が禁止されているのは、一般消費者の自主的・合理的な選択を不当に阻害し得るからです。
企業間の競争は本来、商品やサービスの質や価格などを巡って行われるべきものです。より質が高い商品やサービス、あるいはより安く買える商品やサービスが一般消費者に選ばれるというのが、適切な競争のあり方といえます。
適切な競争環境が確保されていれば、企業は良質・安価な商品やサービスの提供を目指して努力するようになり、社会全体の効用が高まることが期待されます。
しかし有利誤認表示のように、価格等について実態とは異なる表示が行われていると、一般消費者は正しい情報に基づいて商品やサービスを選択することができません。
その結果、本来であれば淘汰されるべき割高な商品・サービスが生き残る反面、十分な企業努力によって価格を抑えた商品・サービスが淘汰されてしまう事態が生じる可能性があります。
このような事態は、社会全体にとって好ましくないため、有利誤認表示は不当表示として禁止されています。
有利誤認表示の具体例
よくある有利誤認表示として、次の3つを紹介します。
(a) 不適切な二重価格表示 (b) 読みにくい打消し表示 (c) 根拠のないNo.1表示 |
不適切な二重価格表示
「二重価格表示」とは、実際の販売価格とそれより高い比較対照価格を併記することにより、値下げや割引をしているように見せる表示です。例えば「定価1万円のところ6000円」などの表示が二重価格表示に当たります。
二重価格表示は、比較対照価格が不適切な形で設定されている場合は有利誤認表示として違法となります。例えば次に挙げるような比較対照価格を設定すると、有利誤認表示に当たる可能性が高いので注意が必要です。
同一ではない商品の価格
販売の実績がない、または乏しい価格
将来の価格であって、実際の販売予定がないもの、またはごく短期間の販売のみ予定しているもの
希望小売価格などと称する価格であって、メーカー等が設定および公表していないもの
競合他社の販売価格であって、最近時の価格とはいえないもの
正確な調査を行わずに示す「市価」
参考:二重価格表示|消費者庁
読みにくい打消し表示
「打消し表示」とは、商品・サービスの内容や取引条件について訴求する「強調表示」につき、その例外などがある旨を示す表示をいいます。
例えば「送料無料!」という強調表示に対し、「※北海道・沖縄・離島を除く」と打消し表示を行う例などが挙げられます。
打消し表示を適切に行わないと、価格その他の取引条件が著しく有利であると一般消費者に誤認させ得るため、有利誤認表示として違法となる恐れがあります。
特に、次に挙げるような打消し表示は読みにくいため、有利誤認表示のリスクが高いので注意が必要です。
打消し表示の文字が小さすぎる、または強調表示に比べて著しく小さい
打消し表示の配置場所が強調表示から離れている
打消し表示の文字色が背景色に紛れている
打消し表示が表示されている時間が短い
強調表示と打消し表示が別の画面に表示されている
強調表示は音声で強調されているのに、打消し表示は音声によって示されていない
参考:打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)|消費者庁
根拠のないNo.1表示
「No.1表示」とは、商品やサービスが特定の分野・領域などにおいて第1位であることを訴求する表示です。
例えば「地域最安値」「コスパNo.1」「保証の手厚さNo.1」「ポイント還元率No.1」などがNo.1表示に当たります。
価格その他の取引条件に関するNo.1表示は、合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合は有利誤認表示として違法になり得ます。
特に、アンケート調査やヒアリング調査等に基づく主観的評価によるNo.1表示は、次の4つのうち1つでも満たしていないと、有利誤認表示と判断される可能性が高いので注意が必要です。
比較する商品等が適切に選定されていること
調査対象者が適切に選定されていること
調査が公平な方法で実施されていること
表示内容と調査結果が適切に対応していること
参考:No.1表示に関する実態調査報告書|消費者庁
有利誤認表示をした事業者に対するペナルティ
有利誤認表示をした事業者は、次のペナルティを受けることがあります。
措置命令
課徴金納付命令
刑事罰
措置命令|表示の差止めや再発防止など
消費者庁長官は、有利誤認表示をした事業者に対し、その表示の差止めや再発防止のために必要な事項などを命ずることができます(=措置命令、景品表示法7条)。措置命令を受けた事業者は、その内容に従って表示の差止めや再発防止措置を行い、消費者庁長官に対して報告しなければなりません。
措置命令の事実および内容は、事業者名とともに消費者庁のWebサイトで公表されるため、企業としての社会的評価の低下も懸念されます。
課徴金納付命令|原則として売上額の3%
有利誤認表示を行った事業者に対し、消費者庁長官は課徴金の納付を命ずるものとされています(=課徴金納付命令、景品表示法8条)。課徴金の額は原則として、有利誤認表示を行っていた期間における対象商品・サービスの売上額の3%です。
ただし、有利誤認表示をしていた事業者が課徴金納付命令を予知することなく、自主的にその旨を消費者庁長官に報告した場合は、課徴金が50%減額されます(同法9条)。
また、一般消費者に対して返金措置を行った場合は、返金した額が課徴金の計算の基礎となる売上額から控除されます(同法10条)。
刑事罰|100万円以下の罰金など
有利誤認表示をした者は「100万円以下の罰金」に処されます(景品表示法48条2号)。法人の役員や従業員が有利誤認表示をした場合は、法人に対しても「100万円以下の罰金」が科されます(同法49条1項2号)。
また、有利誤認表示に関する消費者庁長官の措置命令に違反した者は「2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」に処されます(併科あり、同法46条)。法人の役員や従業員が措置命令に違反した場合は、法人に対しても「3億円以下の罰金」が科されます(同法49条1項1号)。
有利誤認表示による行政処分事例
有利誤認表示をしたことを理由に、消費者庁長官から措置命令を受けた事例を2つ紹介します。
株式会社ゲオストアの事例
株式会社ゲオストアはSNSアカウントにおいて、スマートフォン・タブレットの買取サービスにつき、期間限定で買取金額がアップする旨の広告を行いました。しかし実際には、広告によって示された期限が経過した後でも、同等またはそれ以上の割増率で買い取ってもらえる状態でした。
消費者庁長官は同社に対し、一般消費者に対して有利誤認表示をしていた旨を周知するとともに、再発防止策の実施や役員・従業員への周知徹底を命じました。
参考:株式会社ゲオストアに対する景品表示法に基づく措置命令について|消費者庁
株式会社ツルハグループマーチャンダイジングの事例
株式会社ツルハグループマーチャンダイジングは、自社のECサイトにおいて79商品につき実際の販売価格である「特別価格」と割引前の価格である「通常価格」を併記して販売していました(二重価格表示)。
しかし「通常価格」はいずれも、同サイトにおいて最近相当期間にわたって販売された実績のない価格でした。
消費者庁長官は同社に対し、一般消費者に対して有利誤認表示をしていた旨を周知するとともに、再発防止策の実施や役員・従業員への周知徹底を命じました。
参考:株式会社ツルハグループマーチャンダイジングに対する景品表示法に基づく措置命令について|消費者庁
企業が有利誤認表示を防ぐための対策
一般消費者向けに事業を行う企業は、有利誤認表示を行わないように、次に挙げる対策などを行いましょう。
チェックリストを作成・利用する
複数人で広告等の内容をチェックする
有利誤認表示に関する従業員研修を実施する
チェックリストを作成・利用する
広告などに有利誤認表示が含まれていないかどうか確認する際には、事前にチェックリストを用意しておくと便利です。実務上問題になりやすい事項につき、確認漏れのリスクを抑えられます。
有利誤認表示に関するチェックリストの参考例を紹介しますので、適宜調整したうえでご利用ください。
□ 表示している価格は、実際の販売価格と一致しているか □「通常価格」「定価」などの比較対照価格は、販売実績や将来の販売予定などに照らして適切か □ 期間限定キャンペーンの終了後も、同じ条件で販売する予定になっていないか □「無料」「使い放題」「解約自由」などの強調表示につき例外がある場合は、打消し表示を適切に行っているか □ 消費者が見落とす恐れのある重要な条件を、小さく表示していないか □ 広告で強調するメリットにつき、客観的な根拠を説明できるか □ 価格や販売条件を変更した場合、広告上の記載も修正したか □ キャンペーン終了後、終了した表示を削除したか |
複数人で広告等の内容をチェックする
有利誤認表示などの不当表示を見落とさないようにするためには、一人ではなく複数人で広告等の内容をチェックしましょう。たとえば、広告を担当する部署内でも複数人でチェックし、さらに法務担当者にもチェックを依頼すれば、不当表示が残ってしまうリスクを軽減できます。
有利誤認表示に関する従業員研修を実施する
現場担当者が有利誤認表示に気づいて修正するためには、どのような記載が有利誤認表示に当たり得るのかを正しく理解している必要があります。広告や営業などを取り扱う従業員を対象として、定期的に従業員研修を実施しましょう。
従業員研修では、ケーススタディで具体例を示すなどして、従業員が実際の業務を想定しながら学べるようにすると効果が高まります。
有利誤認表示についてよくある質問
有利誤認表示と優良誤認表示の違いは?
有利誤認表示は、商品やサービスの価格その他の取引条件に関する不当表示です。これに対して優良誤認表示は、商品やサービスの品質、規格その他の内容に関する不当表示です。
有利誤認表示と優良誤認表示は、いずれも景品表示法によって禁止されており、違反すると措置命令・課徴金納付命令・刑事罰の対象になり得ます。
割引価格であることをアピールしたい場合、どのような点に注意すべき?
割引前の価格について、販売実績や将来の具体的な販売予定があることを確認しましょう。また、割引が適用されない例外がある場合は、その旨を見やすい形で明確に示すこと(=打消し表示を適切に行うこと)が大切です。
「DocumentOn」で広告の景品表示法チェックを効率化
広告のチャネルが増えると審査対象も増え、少人数での確認が負担になりやすくなります。「DocumentOn」は、広告・販促物をAIが景品表示法の観点で自動レビューする広告審査AIです。有利誤認や二重価格表示などの観点から、弁護士監修の審査基準に基づいて審査します。Word・PDF・PowerPoint・画像のファイルに対応しており、指摘の理由、根拠、修正案も一画面で確認できます。操作が簡便で指定事項も分かりやすいため、審査担当の方だけでなく、広告担当者の方による一次チェックの用途でも利用可能です。
まとめ
有利誤認表示は、商品やサービスの価格その他の取引条件につき、実際のものや競合他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示です。景品表示法によって禁止されており、違反すると措置命令・課徴金納付命令・刑事罰を受けることがあります。
広告等における有利誤認表示を防ぐためには、チェックリストを作成したうえで、複数人で内容をチェックすることが有用です。広告・営業などを担当する従業員に対しては、定期的に研修を実施して有利誤認表示に関する正しい知識をインプットしましょう。
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