書面決議とは?定義と根拠となる条文
書面決議とは、機関の構成員(株主や取締役など)が一堂に会する会議を開催せず、書面または電磁的記録によって決議を成立させる手続きです。株式会社や一般社団法人などの法人の機関においては、法律にその要件が定められています。実際に集まって審議したうえで決議する通常の会議体決議とは異なり、開催そのものを省略できる点が特徴です。
ただし、根拠となる条文は機関ごとに異なります。株主総会における書面決議(いわゆる「みなし決議」)は会社法319条が根拠となり、取締役会における書面決議は会社法370条が根拠となります。株主総会・取締役会以外の機関(一般社団法人の社員総会や理事会など)についても、書面決議に相当する手続きが別の法律に定められている場合があります。なお、「機関」とは、会社が意思決定や業務執行を行うために設置する組織(株主総会、取締役会など)を指す用語です。
株主総会の書面決議(みなし決議)の要件
株主総会の書面決議(みなし決議)の要件は次の2点です。(会社法319条1項)
- 取締役または株主が、株主総会の目的である事項について提案をすること
- 議決権を行使できる株主全員が、書面または電磁的記録により同意の意思表示をすること
このうち特に重要なのが2の要件です。通常の株主総会決議は、定足数を満たしたうえでの多数決(普通決議は出席株主の議決権の過半数、特別決議は3分の2以上など)によって成立しますが、書面決議は多数決ではなく、株主全員の同意が成立要件となります。この点が、通常の株主総会決議との最大の違いです。
実務上は、株主数が多い会社ほど、全株主から同意を取得する負担が大きくなる可能性があります。株主の所在や連絡手段によっては、同意の取得に時間を要する場合があるため、余裕をもったスケジュールで進める必要があります。
取締役会の書面決議の要件
取締役会の書面決議の要件の中でまず押さえておくべきは、あらかじめ定款にその旨の定めを置くことが前提条件となる点です(会社法370条)。株主総会の書面決議が定款の定めを必要としないのに対し、取締役会の書面決議は定款規定がなければ実施できません。
そのうえで、議決に加わることができる取締役全員が、提案内容に書面または電磁的記録により同意する必要があります。また、監査役設置会社では、監査役が当該提案について異議を述べていないことも要件となります(会社法370条かっこ書き)。
その他の書面決議(一般社団法人の社員総会・理事会など)
書面決議に相当する手続きは、株式会社の株主総会・取締役会に限られません。たとえば一般社団法人の社員総会や理事会についても、会議を開催せずに決議を成立させる手続きが設けられている場合があります。
これらの手続きは、会社法ではなく、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律など、別の法律に根拠を置いています。適用される条数や具体的な要件は法人形態によって異なるため、該当する条数を含め、個別に確認が必要です。
書面決議の実施手順
株主総会・取締役会・その他機関のいずれにおいても、書面決議の起案から議事録の保管までは、主に法務・総務部門の担当者が事務局として進めることになります。実務上の流れは、概ね次のとおりです。
① 提案書面(同意書)を準備する
決議事項の内容、提案者、同意の可否を記入する欄などを記載した提案書面(同意書)を準備します。取締役会の書面決議では、後日の議事録作成に備え、決議事項の内容を具体的に記載しておくことが望まれます。
② 対象者(株主全員/取締役全員など)に送付する
準備した提案書面を、同意が必要な対象者全員に送付します。送付方法は、郵送、電子メール、電子契約サービスの利用など、対象者と合意できる方法であれば選択できます。
③ 全員から同意を回収する
対象者から、提案内容への同意の意思表示を書面または電磁的記録により回収します。実務上は、郵送された同意書の返送、メールでの同意の意思表示、電子契約サービス上での同意など、送付方法に対応した形で回収するのが一般的です。
④ 全員の同意が揃った時点で決議成立とみなす
対象者全員の同意が揃った時点で、決議が成立したものとみなされます。一部の対象者から同意が得られない場合は、決議は成立しません。
⑤ 議事録を作成・保管する
決議が成立した後は、議事録(または決議があったものとみなされる書面)を作成し、保管します。
なお、監査役設置会社が取締役会の書面決議を行う場合は、③の同意回収と合わせて、監査役から異議が述べられていないことの確認も必要となる場合があります。
書面決議の議事録作成と保管について
書面決議によって決議した場合であっても、議事録(または決議があったものとみなされる書面)の作成・保管は必要です。会議を開催していないため、通常の議事録に記載される開催日時や出席者に関する記載は、同意書面の存在をもって代替される形になります。
取締役会の書面決議の場合、会社法施行規則101条4項1号により、議事録には次の事項を記載する必要があります。
- 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 当該事項の提案を行った取締役の氏名
- 取締役会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
株主総会の書面決議についても、決議の内容、同意を得た日、決議が成立したものとみなされた日など、同種の事項の記載が必要です。(会社法施行規則72条4項1号)
保管期間や保管方法についても、通常の議事録と同様の取り扱いが求められる場合があります。保管が不十分な場合、後日の監査対応や紛争対応の際に、決議の成立を証明できないおそれがあります。同意書面と議事録は、セットで整理・保管しておくことが望ましいといえます。
書面決議に関するよくある質問
書面決議はいつの時点で成立したことになりますか?
書面決議は、対象者全員の同意が揃った時点、すなわち最後の対象者の同意(書面または電磁的記録)が会社に到達した時点で、成立したものと解されています。同意の到達日を確認できるよう、送付・回収の記録を残しておくことが実務上のポイントです。
監査役設置会社以外(監査等委員会設置会社など)でも留意点はありますか?
監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社は、会社法上、監査役を置きません。そのため、取締役会の書面決議において監査役の異議の有無を確認する必要はなく、議決に加わることができる取締役全員の同意のみが要件となります。ただし、監査等委員である取締役も「取締役」として同意対象に含まれる点には注意が必要です。個別の状況によって判断が分かれる可能性があるため、実施前に確認してください。
「GovernOn」による書面決議関連業務の効率化
書面決議は、起案、確認依頼、同意回収、署名、保管まで、複数の工程を要する事務作業です。「GovernOn」では、テンプレートからの起案、確認依頼とコメントの一元管理、DocuSign連携による電子署名までを1つの決議ページで完結できます。署名完了後は、改ざん不能な監査証跡として自動的に保管されるため、事後の確認や監査対応にも活用できます。決議に伴う登記・届出などのフォロータスクも同一画面で管理でき、対応漏れの防止につながります。
まとめ
書面決議は、株主総会・取締役会・その他機関のいずれにおいても、会議を開催せず書面等によって決議を成立させる手続きです。ただし、根拠となる条文や要件は機関ごとに異なり、株主総会は株主全員の同意、取締役会は定款の定めと取締役全員の同意が必要になるなど、共通ではありません。
一方で、提案書面の準備から同意の回収、議事録の作成・保管に至る実施手順は、場面を問わずおおむね共通しています。自社(自法人)が書面決議を検討する際は、まず適用される条文と要件を確認したうえで、共通の実施手順に沿って進めることが実務上のポイントとなります。
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