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リスクガバナンスとは?|経営判断の原則・RAF・法務部門の役割などを解説

リスクガバナンスとは?|経営判断の原則・RAF・法務部門の役割などを解説
この記事を読んでわかること
    • リスクガバナンスとは何か

    • 経営判断の原則や善管注意義務など、意識すべき法的責任

    • リスクガバナンスに関するルールと仕組み

    • 適切なリスクテイクを支える企業の組織設計

    • リスクガバナンスに関して法務部門が果たすべき役割

企業が事業活動を行う際には、それに伴うさまざまなリスクを適切に管理する「リスクガバナンス」が重要になります。経営陣・法務部門・事業部門などが連携してリスク分析を行うとともに、リスクの顕在化を防ぐための組織設計を検討するなどして、安定的な事業運営に努めましょう。

本記事では企業のリスクガバナンスについて、概要や関連するルール・仕組み、適切なリスクテイクを支える企業の組織設計などを解説します。

【「GovernOn」でリスクガバナンスに必要な意思決定記録を仕組み化】

リスクガバナンスを機能させるには、「適切な意思決定プロセス」を、適切に記録する体制を整えることが欠かせません。「GovernOn」は、議題・議事録・決議内容を1つの会議ページに集約し、決議に至る経緯や宿題事項の対応状況をAIで横断検索できるようにします。担当者が交代しても運営記録が失われにくくなり、リスクガバナンス体制の一貫性を保ちやすくなります。

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阿部 由羅
執筆

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所 代表弁護士

西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。 

弁護士紹介:https://abeyura.com/lawyer/

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リスクガバナンスとは?

企業活動にはさまざまなリスクが伴うため、「リスクガバナンス」の取り組みが重要になります。まずはリスクガバナンスとは何かを確認しておきましょう。

リスクガバナンスとは

「リスクガバナンス」とは、企業活動に伴うリスクを把握・評価したうえで、そのリスクを適切にコントロールすることをいいます。 

企業が活動する中では、経営判断の失敗や市場環境の変化、取引先との訴訟や不祥事など、さまざまなリスクを伴います。避けるべきリスクもある一方で、成長を目指すためには覚悟しなければならないリスクもあります。

リスクの種類・顕在化の可能性・影響の大きさなどを分析したうえで、トラブルをできる限り防ぎつつ、万が一トラブルが発生してもその影響を許容し得る範囲内に抑えることがリスクガバナンスのポイントです。

リスクガバナンスとGRC

近年では「ガバナンス(Governance)」「リスク(Risk)」「コンプライアンス(Compliance)」を一体的に捉える「GRC」という考え方が提唱されています。

  • ガバナンス:企業の意思決定や、それに対する監督を適切に行うための仕組みを整えること

  • リスク:事業活動に伴うリスクを把握・評価し、そのリスクを適切に管理すること

  • コンプライアンス:法令などの社会規範を遵守し、適正に事業活動を行うこと

3つの要素を独立して捉えるのではなく、相互に関連付けてルールの整備や組織設計を行うことが、GRCのポイントです。

リスクガバナンスは、リスク管理を目的としたガバナンス(=仕組み作り)であり、法令違反等のリスクを管理する観点からはコンプライアンスにも関係するため、まさにGRCの考え方を体現した取り組みといえます。

リスクガバナンスにおいて意識すべき「善管注意義務」と「経営判断の原則」

企業のリスクガバナンスを検討するに当たっては、経営判断に関して取締役が負う法的責任を理解しておく必要があります。

特に留意すべきなのは、取締役の「善管注意義務」と、経営上の判断について取締役の責任を制限する「経営判断の原則」です。両者を踏まえ、適切な意思決定プロセスを整備することが重要となります。

善管注意義務とは

「善管注意義務」とは、他人のために事務を取り扱う人が、その地位や職責にふさわしい注意を払ってその事務を行う義務をいいます。

取締役は会社に対して善管注意義務を負います。善管注意義務に違反した取締役は、会社に生じた損害を賠償しなければなりません(会社法423条1項)。 

たとえば、取締役が法令違反に当たることを認識していながら、従業員に対してあえてその行為を指示した場合や、黙認して止めなかった場合などには、善管注意義務違反の責任を問われる可能性があります。

経営判断の原則とは

取締役は、経営判断を行う際にも善管注意義務を負います。適切な経営判断をするよう努めなければなりませんが、経営判断は不確実な状況で行わざるを得ないのが通常です。結果的に経営判断が失敗に終わった場合に、その責任を常に取締役に負わせるのでは、取締役は萎縮して適切なリスクテイクができなくなってしまいます。 

そこで、判例上「経営判断の原則」が採用されています(最高裁平成22年7月15日判決)。経営上の専門的判断については、決定の過程や内容に著しく不合理な点がない限り、取締役は善管注意義務違反の責任を負わないとするものです。

意思決定プロセスの適正化が重要

経営判断の原則に照らすと、取締役はリスクが伴う経営判断を過度に避けるのではなく、経営判断に先立って情報収集やリスク分析を適切に行うことが重要になります。そのための組織体制やプロセスを整備することが、リスクガバナンスの目指すべきところです。

リスクガバナンスを機能させるフレームワーク「RAF」

企業活動に伴うリスクを適切に管理するためには、単にリスクを発見して排除するのではなく、「どの程度のリスクを取るのか」を明確にすることが重要です。そのための枠組みとして「リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)」が注目されています。

リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)とは

「リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)」とは、企業が経営目標を達成するために受け入れるリスクの種類や程度(=リスクアペタイト)を明確にし、それに基づいてリスクを管理する枠組みです。

企業は経営戦略を踏まえてリスクアペタイトを設定し、その範囲内で事業活動を行います。また、リスクの状況を継続的にモニタリングし、許容範囲を超えるおそれがある場合には対応策を講じることが求められます。

参考:ガバナンス改革とリスクアペタイト・フレームワーク|日本銀行金融機構局金融高度化センター

RAFにおいて法務部門が果たすべき役割

法務部門は、主に経営判断に伴うリーガルリスク(法的リスク)を把握・評価したうえで、経営陣や事業部門に対して助言を行う役割を担います。

具体的には、法令やガイドラインの調査、法令違反が発生した場合の影響の分析、法令違反を防止するための対策の検討などを行います。経営陣や事業部門とは緊密にコミュニケーションをとり、リーガルリスクの内容や許容度などについて認識を共有することが重要です。

法務部門が特に意識すべきリーガルリスク

企業活動に伴うリーガルリスクは多岐にわたるため、法務部門には法令等に関する網羅的な検討を行うことが求められます。

特に次に挙げるリスクは、企業活動に重大な影響を及ぼすおそれがあるので、注意深く調査と分析を行ってください。

  • 業規制に対する違反

  • 個人情報や営業秘密の漏えい

  • 知的財産権の侵害

  • 従業員とのトラブル(労働基準法違反、ハラスメント、不当解雇など)

  • 取引規制に対する違反(独占禁止法違反、取適法違反など)

  • 製造物責任

  • 取引先との契約に対する違反

  • 設備の瑕疵による工作物責任

など

適切なリスクテイクを支える企業の組織設計

致命的なリスクを避けつつ、経営目標の達成に向けて必要なリスクを適切にとるためには、次のポイントを踏まえた組織設計を行うことが有用です。

  1. 取締役間の相互監視|取締役会・社外取締役など

  2. CRO・リスク管理委員会の設置

  3. 「3ラインモデル」による見落としの防止

取締役間の相互監視|取締役会・社外取締役など

取締役による業務執行に対し、別の取締役による監視を及ぼすと、独断で許容できないリスクをとるような事態を防ぎやすくなります。取締役会を設置して定期的に開催することや、社外取締役を選任して独立した立場からチェックを行ってもらうことなどが効果的です。

CRO・リスク管理委員会の設置

CRO(最高リスク責任者)やリスク管理委員会など、全社横断的にリスクの把握・分析を行う機関・組織を設置することも考えられます。特に規模が拡大しつつある企業や、すでに一定以上の規模に達している企業は、経営陣に近い機関・組織としてCROやリスク管理委員会の設置を検討するとよいでしょう。

「3ラインモデル」による見落としの防止

リスクの見落としを防ぐためには「3ラインモデル」という考え方が有用です。次の3つの部門が三重のチェックを行うことにより、不正行為の防止やよりよい価値の創造を図ります

  • 現場で実働を担当する事業部門等(第1線)

  • 財務、法務、コンプライアンスなどの管理部門(第2線)

  • 内部監査部門(第3線) 

たとえば事業部門が検討している取引については、原則として法務・コンプライアンス部門のチェックを受けることを義務付ければ、致命的なリスクの見落としの大部分は防げると考えられます。そのうえで定期的に内部監査も実施すれば、見落とされていたリスクも発見して早期に対処しやすくなります。 

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リスクガバナンスについてよくある質問

取締役がリスクを取って失敗した場合、善管注意義務違反になりますか?

経営判断の原則により、経営上の専門的判断については、決定の過程や内容に著しく不合理な点がない限り、取締役は善管注意義務違反の責任を負いません。リスクの伴う経営判断を過度に避けるのではなく、事前の情報収集やリスク分析を適切に行うことが重要です。

リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)は、中小企業でも重要ですか?

リスクガバナンスは、企業の規模を問わず重要です。したがって中小企業でも、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)により、経営目標を達成するために許容し得るリスクを明確化することが重要になります。

法務部門は、リスクガバナンスにどの段階から関与すべきですか?

実際に問題が発生してから対応するのではなく、企業としての意思決定を行う段階から関与することが期待されます。経営陣や事業部門と緊密に連携し、早い段階からリーガルチェックを機能させる仕組みを整えることが重要です。

「GovernOn」でリスクガバナンス体制の属人化を防ぐ

リスクガバナンス体制の構築では、経営判断に至る議論の経過や決議内容を正確に記録し、必要なときにすぐ参照できる状態を保つことが重要です。「GovernOn」は、取締役会や委員会の議事録・決議・アクションアイテムを一元管理し、AIによる横断検索によって過去の意思決定の経緯を素早く確認できる環境を整えます。

 ガバナンス体制構築に 必要な機能がここに。

まとめ

企業が適切にリスクテイクを行うためには、経営陣・法務部門・事業部門などが連携してリスクガバナンスに取り組むことが重要です。致命的なリスクを回避しつつ、成長のためにとるべきリスクはしっかりとれるような仕組みを整備しましょう。

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