ガバナンスとは? 強化する目的
企業が社会の信頼を獲得しながら持続的に成長していくためには、不正の防止や適切な経営上の意思決定につながる「ガバナンス(コーポレートガバナンス)」が欠かせません。まずはガバナンスとは何か、なぜ強化する必要があるのかを解説します。
ガバナンスとは?
「ガバナンス(コーポレートガバナンス)」とは、企業がステークホルダーの立場を踏まえつつ、透明・公正かつ迅速・果断に意思決定を行うための仕組みを指します。日本語では「企業統治」と訳されるのが一般的です。
ガバナンスは、経営陣に対する監督や不正を迅速に発見できる体制、コンプライアンス意識の浸透した企業風土などのさまざまな要素から成り立ちます。ガバナンスが健全に機能している企業は、社会からの信頼を獲得しつつ、持続的に成長していくことが期待されます。
企業のガバナンス強化が求められる理由・背景
企業は社会に対して影響を及ぼす主体として、近年では特に高い透明性や説明責任が求められるようになってきています。SNSやESG投資の普及などにより、社会の企業に対する監視の目が強まっているためです。
企業においては、法令違反などの不祥事を防ぎつつ、ステークホルダーに対して透明性のある経営を行うことにより、社会からの信頼を獲得する必要性が高まっています。そのための仕組みであるガバナンスを強化することは、企業にとって急務といえるでしょう。
ガバナンスが機能していない企業によく見られる課題
ガバナンスが十分に機能していない企業においては、特に次に挙げる課題が見受けられます。これらの課題を克服するための対策を講じることが、効果的なガバナンス強化の近道です。
- 経営陣に対する監督が不十分である
- 重要な意思決定のプロセスが適切に記録・管理されていない
- 不正を早期に発見し、対処できる体制が整っていない
- 組織としての風通しが悪い
- ガバナンスに対する役員・従業員の意識が不十分である
経営陣に対する監督が不十分である
経営陣に対する監督機能が十分に働いていないと、独断的な意思決定や利益相反行為などによる企業不祥事を招くリスクが高まります。取締役間の相互監視や、監査役による監査などを通じて、経営陣に対する監督をきちんと機能させることが大切です。
重要な意思決定のプロセスが適切に記録・管理されていない
取締役会をはじめとする重要な会議における意思決定のプロセスは、要点を漏れなく記録したうえで、適切な方法で管理することが大切です。
重要な意思決定のプロセスが適切に管理・記録されていないと、経営の透明性が失われて不祥事のリスクが高まるとともに、ステークホルダーに対する説明責任も果たせなくなるおそれがあります。議事録の管理などを含めて、会議に関する業務を一元化できる仕組みを整備することが望ましいです。
不正を早期に発見し、対処できる体制が整っていない
不正に対するモニタリング体制が十分に機能していない企業は、法令違反などが長期間にわたって見過ごされ、発覚した際には大規模な不祥事に発展するリスクを抱えています。また、たまたま不正を早期に発見することができても、その対応手順が明確になっていなければ、迅速・適切な是正措置を講じることは困難です。
企業における不正行為の発生を完全に防ぐことは難しいため、早期発見や適切な対応ができる体制を整備して、影響を最小限に抑えることが重要です。
組織としての風通しが悪い
上司に意見を言いにくい、部署間で情報共有が行われないなど、組織としての風通しが悪い職場環境では、不正の兆候を見逃しやすくなります。ガバナンスを十分に機能させるためには、役職や部署を問わず意見や情報を日常的に共有する組織風土を醸成することも大切な要素の一つです。
ガバナンスに対する役員・従業員の意識が不十分である
企業におけるガバナンスは、個々の役員や従業員による取り組みの積み重ねで成り立ちます。経営層から実務担当者に至るまで、構成員全員がガバナンスの目的や重要性を理解し、日々の業務の中で実践することが重要です。
ガバナンスに対する役員や従業員の理解が不正確、またはその実践に対する意識が不十分だと、社内制度などを整備しても形骸化してしまいます。ガバナンスを企業文化として定着させるためには、継続的な研修や社内広報などを通じて、全社的なガバナンス意識の向上を図る必要があります。
企業がガバナンスを強化するための具体策
ガバナンスを強化するには、自社の課題を把握したうえで、それを解決するための施策を継続的に行うことが重要です。特に次に挙げる方法は、多くの企業にとってガバナンスの強化に役立つと考えられます。
- 現状把握と優先順位付け
- 社外取締役の選任
- 内部通報制度の導入と運用
- 「3ラインモデル」によるチェック体制の整備
- 役員・従業員に対する研修
- ガバナンス体制の継続的な見直し・改善
現状把握と優先順位付け
ガバナンス強化の第一歩は、自社の現状を客観的に把握し、どのようなリスクが存在するかを整理することです。組織の内外において想定されるリスクをできる限り幅広く把握し、それが顕在化した場合の影響の大きさなどを分析する必要があります。
そのうえで、特に影響の大きいリスクへの対策を優先的に検討します。資本や人員などの経営資源が限られてるなかで、それらを計画的・効果的に活用することが実効性の高いガバナンスの構築につながります。
社外取締役の選任
経営陣に対する監督機能を強化するためには、社外取締役を選任することが有用です。社内事情に左右されにくい立場から意見を述べたり、業務執行取締役の職務を監視したりすることは、独断的な意思決定や不正な利益相反行為などの抑止につながります。
また、生え抜きの取締役とは異なる社外取締役の知見や経験を経営に反映すれば、中長期的な企業価値の向上も期待できます。
内部通報制度の導入と運用
企業における不正行為を早期に発見するためには、内部通報制度を導入することが有力な対策となります。
内部通報制度は、社内または社外に違法行為の通報窓口を設け、通報者に対して不利益な取扱いをしないことを保障する制度です。従業員が安心して通報できる制度を整えれば、違法行為の早期発見につながります。
「3ラインモデル」によるチェック体制の整備
ヒューマンエラーや私欲による背信的行為などを防ぐためには、複数の担当者によるチェック体制を整備することが有用です。
特にガバナンスの文脈では「3ラインモデル」という考え方がよく強調されます。現場で実働を担当する事業部門等(第1線)、財務・法務・コンプライアンスなどの管理部門(第2線)および内部監査部門(第3線)が三重のチェックを行うことにより、不正行為の防止やよりよい価値の創造を図ろうとするものです。
企業における業務のチェック体制を整備する際には、「3ラインモデル」の考え方を念頭に置くとよいでしょう。
参考:IIAの3ラインモデル 3つのディフェンスラインの改訂|一般社団法人日本内部監査協会
役員・従業員に対する研修
ガバナンスを企業全体に浸透させるためには、役員や従業員がその目的や自らの役割を正しく理解することが不可欠です。コンプライアンスや情報共有などに関する研修を定期的に実施することで、不正行為などのリスクに対する感度を高め、適切な判断や行動を促すことができます。
さらに、役職や職務内容に応じた研修を実施すれば、個々の構成員が学んだ考え方を具体的な業務に落とし込むことができ、より実践的なガバナンス体制の構築につながります。
ガバナンス体制の継続的な見直し・改善
事業の環境や法令などの社会規範、企業の構成員などは変化し続けるため、構築したガバナンス体制をそのまま維持するだけでは不十分です。定期的にガバナンス体制の運用状況を評価し、課題や改善点を洗い出したうえで、ルールや運用方法を見直すことが求められます。
企業のガバナンス強化についてよくある質問
中小企業でもガバナンス強化は必要?
ガバナンスの重要性は、企業の規模によって異なりません。中小企業であっても、社会の信頼を獲得しながら持続的に成長していくためには、ガバナンスの強化が重要な課題となります。
社外取締役は必ず選任すべき?
監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社および上場会社には、法令や証券取引所の上場規則によって社外取締役の選任が義務付けられています。
それ以外の会社においては、社外取締役を選任する法令上の義務はありません。社外取締役の選任は経営監督強化などの観点から有用ですが、予算等の関係で社外取締役の選任が難しい場合、ガバナンスの強化につながる別の方法を検討しましょう。
ガバナンス強化はどの部署が主導すべき?
法務・コンプライアンス・総務・経営企画などの部署が中心となりますが、その他の部署との連携も重要になります。経営陣のリーダーシップのもと、全社的にガバナンスの強化に取り組みましょう。
「GovernOn」による企業ガバナンスのスマートな変革
「GovernOn」は、取締役会運営やグループ会社管理など、煩雑なコーポレートガバナンス業務を効率化するAIガバナンスプラットフォームです。取締役会の招集・資料配布・議事録作成・タスク管理を一元化する「取締役会ポータル」や、複雑な子会社情報をワンプラットフォームで管理できる「グループ会社管理」を備えています。さらに、AIが全データを横断検索して決議案作成やドキュメント作成をサポート。安全な意思決定プロセスと監査証跡の自動保存により、企業の透明性とガバナンスを次のステージへと引き上げます。
まとめ
企業におけるガバナンスの強化は、経営の透明性や適切な意思決定、ひいては社会からの信頼に基づく持続的な成長につながる重要な取り組みです。自社の課題を把握したうえで、その課題を解決するための施策を行い、実効性のあるガバナンス体制を構築・運用しましょう。
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