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生成AIガイドラインの作り方|策定手順や注意点、ひな形を解説

生成AIガイドラインの作り方|策定手順や注意点、ひな形を解説
この記事を読んでわかること
    • 生成AIガイドラインを制定・改訂すべき背景

    • 生成AIガイドライン導入の5つのステップ

    • 生成AIガイドラインの条文例

    • 主要な官公庁や公的・専門団体が公表している生成AIガイドラインの紹介

    • 生成AIガイドライン策定に関するよくある疑問

「便利だからと、現場が生成AIを使い始めているのではないか」「自社の生成AI利用に、実際にガバナンスが効いているのか分からない」。法務・コンプライアンス担当者や情報システム部門の実務者から、こうした不安の声が聞かれる場面が増えています。

こうした不透明な状況を解消し、安全かつ積極的に生成AIを活用するための土台となるのが、社内の「生成AIガイドライン」です。本記事では、官公庁や専門団体が公表しているガイドラインの内容を踏まえた策定手順(5つのステップ)、ガイドラインにそのまま取り込める条文例、運用上の疑問に答えるQ&Aなど、実務で使える情報を整理して解説します。


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阿部 由羅
監修

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所 代表弁護士

西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。 

弁護士紹介:https://abeyura.com/lawyer/

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目次

1. なぜ今「生成AIガイドライン」が必要なのか?

国や主要機関が主導する生成AIの組織内統治(ガバナンス)の最新動向

経済産業省や総務省をはじめ、地方自治体や主要な専門団体が、生成AIの利用に関するガイドラインや手引きを公表しています。これらの動きに代表されるように、生成AIを組織的に利用する際のルールやガバナンスの整備が社会全体で広がっています

こうした状況を踏まえると、企業においても、生成AIの利用を個々の従業員の判断に委ねるのではなく、利用ルールを明確に定め、適切に管理することが重要です。ルールが不透明なまま生成AIの利用を放置することは、コンプライアンス上のリスクにつながる可能性があります。

生成AIガイドラインが果たす本来の目的とは

生成AIガイドラインは、従業員の利用を一方的に禁止・制限するためのものではありません。「どうすれば安全に生成AIを業務で活用し、生産性を高められるか」という共通の枠組みを定めるものと位置付けられます。

法務や情報システム部門がリスクを管理するだけでなく、現場が積極的に生成AIを活用できるよう、リスク回避の境界線を明確にすることが、ガイドラインの主な目的といえます。

2. 「生成AIガイドライン」策定・改訂の5つの実務ステップ

【ステップ1】業務におけるAI利用実態と部門ごとのニーズ調査

ガイドライン策定の出発点は、現場へのヒアリングによる実態把握です。法務、情報システム、マーケティング、開発部門など、どの部署がどの生成AIサービス(ChatGPT、Claudeなど)を、どのような業務(文章作成、メール作成、契約ドラフトなど)で使いたいのか、あるいはすでに個人の判断で利用していないか(シャドーIT)などを確認します。

【ステップ2】部門横断型の「AIガバナンスプロジェクトチーム」の立ち上げ

ガイドラインの策定は、法務担当者だけで進めるのではなく、情報システム部門やセキュリティ部門、経営企画、人事などを巻き込んで進めることが望ましいです。たとえば情報システム部門やセキュリティ部門とは、利用する生成AIの種類や機密情報の入力制限などについて、既存のセキュリティポリシーとの整合性や調整の要否などを確認します。現場の管理職とは、業務上どのような場面で生成AIを利用するのかを確認し、過度な制限によって業務効率が低下しないよう、実務とのバランスをすり合わせます。さらに、人事部門とも連携し、従業員への教育や研修、ルール違反があった場合の対応などを検討しましょう。

【ステップ3】ひな形の選定と自社の事業特性・リスクに応じた内容調整

JDLA(一般社団法人日本ディープラーニング協会)などが公開している公的なひな形をベースにしつつ、自社の事業内容や取り扱う情報の性質などに応じて、生成AIの利用範囲や禁止事項などの定め方を調整します。公的ひな形は汎用的に作られているため、自社の実態に合わせたカスタマイズが必要になります。

【ステップ4】経営陣による正式承認と社内規程(細則など)への位置付け

策定したガイドラインは、単なる推奨事項として扱うのではなく、社内の正式なルールとして位置付けることが重要です。情報セキュリティ規程や就業規則の一部に含める方法や、「生成AIガイドライン」という名称の独立した社内規程を設ける方法などが考えられます。取締役会決議を行うなど、正式な決裁プロセスを経てガイドラインを導入・実施しましょう。

【ステップ5】従業員への周知徹底・リテラシー教育と「定期的な改訂サイクル」の設計

ガイドラインの策定後は、全社向けの研修や説明会を実施し、制定の背景や内容を周知します。生成AIに関する技術や活用方法は速いスピードでアップデートされるため、策定したガイドラインは定期的に見直す必要があります。あらかじめ「半年に1回」「年1回」などの見直し時期を決めておき、必要に応じて内容を改訂する仕組みを整えておくことが重要です。

3. 生成AIガイドラインに盛り込むべき重要項目と条文案

生成AIガイドラインにおいて特に重要な構成要素

生成AIガイドラインに盛り込むべき事項としては、特に「目的」「適用範囲」「利用可能なAIサービス」「入力・利用制限」「出力・ファクトチェック」「違反者への対応」などが重要です。これら6つの基本事項について、条文案を示します。

【条文案①】ガイドラインの目的(情報セキュリティの確保・業務効率化など)

第〇条(目的) 本ガイドラインは、当社のすべての役職員が、業務において生成AIサービスを適切かつ安全に利用し、情報セキュリティを確保しつつ業務効率化を推進することを目的とする。

冒頭において、生成AIガイドラインの目的を明記します。生成AIの適切かつ安全な利用による情報セキュリティの確保や、業務効率化といった目的を掲げるのがよいでしょう。

【条文案②】ガイドラインの適用範囲(役職員・業務受託者)

第〇条(適用範囲)本ガイドラインは、当社のすべての役員及び従業員(正社員、契約社員、パート、アルバイトなどを含むが、これらに限らない。以下、当社の役員と従業員を総称して「役職員」という。)に適用される。

2. 当社から業務を受託する者(以下「業務受託者」という。)が生成AIサービスを利用することが想定されるときは、当該業務受託者に係る契約の締結、発注その他の業務に関与する役職員は、当該業務受託者に対し、契約条項への規定その他の適切な方法により、本ガイドラインに準じた内容を遵守させるよう努めるものとする。

全社的なルールを定める生成AIガイドラインの趣旨に鑑みると、適用範囲は全役職員とするのがよいでしょう。

業務受託者に社内の服務規程を直接適用することは、偽装請負との関係からリスクが高いと考えられます。そのため上記の条文例では、業務受託者には役職員を通じてガイドラインに準じた内容の遵守を求めるという間接的な建付けを採用しています。

【条文案③】業務で利用可能な「承認済みサービス」の規定(個人の勝手な利用の禁止)

第〇条(利用可能サービス) 役職員が業務上利用できる生成AIサービスは、当社情報システム部門が承認し、公式アカウントを付与した有償サービス、またはAPI連携サービス(学習への二次利用をオプトアウトしているもの)に限る。当社の業務に関し、個人の無償アカウントを含む未承認サービスの利用は一切禁止する。

生成AIサービスを選定する際には、データの取扱条件やセキュリティ対策などを確認する必要があります。そのため、役職員に利用を認める生成AIサービスは会社が指定することが望ましいです。

また、個人契約の無償アカウントは入力したデータがAIサービスの学習に利用される場合があるほか、入力データの保存期間や第三者への提供、削除の方法などについて適切な情報管理の水準を満たさない場合があります。そのため、個人の無償アカウントの利用は明示的に禁止しておくのがよいでしょう。

【条文案④】入力データの制限(秘密情報、個人情報などの取り扱い)

第〇条(入力データの制限) 役職員は、いかなる場合であっても、以下の各号に該当するデータを生成AIに入力してはならない。ただし、情報セキュリティ主管部門が例外的に認めた非学習設定の環境下における一部の機密情報は、この限りではない。

(1)取引先に対して秘密保持義務を負う情報
(2)氏名、連絡先その他の顧客の個人情報
(3)当社の未公開特許、新規事業計画、ソースコードなどの営業秘密

生成AIサービスに入力した情報は、提供事業者側で保存・処理されるほか、サービスの設定によってはAIの学習に利用される可能性があります。秘密情報や個人情報などを入力すると、意図しない情報漏えいや第三者への提供・利用につながるおそれがあるため、生成AIサービスに入力してはいけない情報をあらかじめ定めることが重要です。

入力制限の対象は、業種や取り扱うデータの性質によって個別の検討を要します。

【条文案⑤】出力データの人間の目によるチェック(著作権侵害やハルシネーションの防止)

第〇条(出力データの検証) 役職員は、生成AIの出力結果(文章、ソースコード、画像などを含むが、これらに限らない。以下「出力結果」という。)を業務に供する前に、以下の事項を遵守して自ら検証を行わなければならない。
(1)出力結果に誤情報、偏見その他の不適切な内容が含まれていないか、信頼できる一次情報を参照するなどして確認すること。
(2)出力結果を商用利用等に供する場合、既存の他人の著作物、意匠その他の知的財産との類似性の有無等を適切に確認し、権利侵害の未然防止に努めること。

生成AIの出力には、事実と異なる情報や不正確な内容が含まれる可能性があるため、出力内容をそのまま最終的な判断や成果物としてはいけません。生成AIは業務を効率化するための補助的なツールとして利用し、一次情報の確認などによって利用者自身による検証を行うことが必要です。

【条文案⑥】万が一の情報漏洩や規律違反が発生した際の報告体制と懲戒処分

第〇条(違反および事故発生時の対応) 役職員は、生成AIサービスへの入力による情報漏洩または第三者に対する権利侵害のおそれがあることを発見した場合は、直ちに情報セキュリティ主管部門および法務部門へ報告し、その指示に従わなければならない。

2. 本ガイドラインに対する違反行為は、就業規則第〇条に基づき懲戒処分の対象となる場合がある。

生成AIの利用による情報漏洩や権利侵害の疑いが生じたときは、迅速な対応が求められるため、直ちに報告することを役職員に義務付けましょう。また、ガイドライン違反は懲戒処分の対象になり得ることも明記します。

4. 生成AIガイドラインの参考になる官公庁等のガイドライン

生成AIガイドラインの内容を検討する際には、官公庁や専門団体が公表している資料が参考になります。ここでは、実務上参照される機会が多い5つの資料を紹介します。

4-1. 経済産業省・総務省:「AI事業者ガイドライン」

開発者・提供者・利用者という3つの観点から、AIガバナンスにおける基本的な指針をまとめた資料です。民間企業が「AIの利用者」としてどのような安全管理措置を取るべきかの基本的な考え方が示されています。同ガイドラインは継続的に改訂されているため、最新版を確認してください。

参考:経済産業省・総務省,「AI事業者ガイドライン」,(参照日:2026年7月2日)

4-2. 総務省:「生成AIはじめの一歩」

生成AIをこれから利用する初学者や中小企業向けに作成された入門解説資料です。利用方法や利用時の注意点など、生成AIに関する基本的な考え方を理解する第一歩として、従業員研修などに活用しやすい内容になっています。

参考:総務省,「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」,(参照日:2026年7月2日)

4-3. 東京都:「AI導入・活用ガイドライン」/「生成AI利用の手引き」

都の職員向けに公表された実践的な利用ガイドです。行政機関としてのセキュリティ水準を維持しながら業務効率を高めるための考え方や利用ルールが整理されており、民間企業がガイドラインを策定する際にも参考となります。

参考:東京都デジタルサービス局,「AI導入・活用ガイドライン、生成AI利用の手引き」,(参照日:2026年7月2日)

4-4. 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA):「生成AIの利用ガイドライン」

弁護士監修のもと作成された民間向けのひな形として広く参照されている資料です。そのまま活用できる条文サンプルが用意されており、法務担当者が自社ガイドラインの草案を作成する際に、最初に確認したい資料の一つといえます。

参考:一般社団法人日本ディープラーニング協会,「生成AIの利用ガイドライン」,(参照日:2026年7月2日)

5. 「生成AIガイドライン」策定・運用のよくある疑問(Q&A)

Q1. 無料の生成AIサービスはガイドラインで規制すべきですか?

無料サービスの利用は、原則禁止とすることが望ましいと考えられます。

多くの無料の生成AIサービス(利用規約への同意のみで使用できる一般的なブラウザ版サービスなど)では、入力したデータがAIモデルの再学習・二次利用に使われる利用規約になっている場合があります。企業の機密情報や顧客の個人情報を入力すると、意図しない形で外部に流出するリスクが生じる可能性があります。

対策としては、有料のエンタープライズ契約やAPI経由など、データ学習を無効化(オプトアウト)する設定ができるサービスのみを利用することが考えられます。

Q2. ガイドライン違反が発覚した場合の対応方法はどのようなものですか?

違反アカウントの利用を直ちに停止しましょう。そのうえで利用履歴を確認し、漏えいした可能性がある情報を特定するとともに、必要に応じてサービス提供者へデータの削除を依頼します

さらに、経営陣・情報セキュリティ部門・法務部門などへ情報を連携し、事実関係や影響についての調査を行いましょう。調査によって判明した事実関係に基づき、ステークホルダーへの説明や対外的な公表、行為者の懲戒処分などを行います。

こうした違反発覚時の対応手順は、あらかじめガイドライン内に明記しておくことが望ましいです。

Q3. ガイドラインのルールに就業規則並みの「法的強制力」や懲戒の効力を持たせるにはどうすればよいですか?

生成AIガイドラインに法的拘束力があることを明確化するためには、就業規則に「生成AIガイドラインを遵守すること」を明記し、ガイドラインを下位規程・細則として位置づけることが考えられます。この場合は労働基準法の規定に基づき、ガイドラインの内容等を従業員に対して周知しなければなりません。

6. グループガバナンスを「GovernOn」で仕組み化

社内ルールや意思決定の運用は、子会社が増えるほど、状況把握や属人化の防止が難しくなります。「GovernOn」は、グループ会社の基本情報や取締役会・委員会の議事録、決議をひとつに集約するガバナンスプラットフォームです。AIによる横断検索で各社の状況を確認でき、多言語UIにも対応しているため、海外子会社を含めた展開にも活用できます。

ガバナンス体制構築に 必要な機能がここに。

7. 制限によるガバナンスから安全な推進枠組みを作る「攻めのガバナンス」へ

生成AIガイドラインの策定は、企業が生成AIを安全に活用するための土台づくりでもあります。本記事で解説した手順や注意点を踏まえて、自社の事業内容や状況に適したガイドラインを策定しましょう。生成AIガイドラインを安全かつ適切に利用するためには、ガイドラインの策定に加えて、セキュアなリーガルテック製品を活用することが効果的です。情報セキュリティを確保しながら組織の生産性向上につなげる「攻めのガバナンス」への移行が、今後の法務・コンプライアンス担当者に求められる役割といえます。

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