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Deep Researchとは? 法務での活用法や限界、実務への導入時の注意点などを解説

Deep Researchとは? 法務での活用法や限界、実務への導入時の注意点などを解説
この記事を読んでわかること
    • Deep Researchの仕組みと従来の生成AIとの違い
    • 法務部門における具体的な活用場面
    • Deep Research利用時の限界とリスク
    • 誤情報を防ぐための検証フローと実務ルール
    • 機密情報・個人情報の管理と社内統制のポイント
    • 法務特化型AIツールという選択肢

生成AIの進化により、法務部門でもリーガルリサーチの効率化が期待されています。「Deep Research」は、ChatGPTをはじめとする様々な生成AIに搭載されている機能で、従来の生成AIとは異なり、複数の情報源を横断的に調査し、引用元を明示しながら調査レポートを作成できる機能として注目を集めています。

しかし、法務業務で活用する際には、ハルシネーション(誤情報の生成)のリスクや機密情報の取り扱い、法的判断の限界など、理解しておくべき注意点が存在します。本記事では、Deep Researchの仕組みと法務での具体的な活用場面を整理しつつ、誤情報を防ぐための検証フローや社内統制ルールについて解説します。


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Deep Researchとは

Deep Researchは、ChatGPTをはじめとする様々な生成AIに搭載されている調査支援機能です。従来の生成AIが1回の質問に対して1回の回答を返すのに対し、Deep Researchは複数回にわたって情報を収集・分析・整理するプロセスを自動的に実行します。

ユーザーが調査したいテーマを入力すると、関連キーワードで複数の情報源を検索し、収集した情報を整理・分類します。そこから不足している情報や深掘りが必要な論点を特定し、追加の検索を実行していき、最終的には情報を統合して、出典リンクを明示した調査レポートなどの形式で出力されます。

この多段階のリサーチプロセスにより、従来の生成AIでは得られなかった網羅的かつ体系的な情報収集が可能になりました。法務部門においても、法令改正の動向調査や判例の傾向分析など、幅広いリサーチ業務での活用が期待されています。ただし、Deep Researchはあくまで情報収集と整理を補助するツールであり、法的な助言や結論を出す機能ではありません最終的な法的判断は人が行う必要があるという前提を理解しておくことが重要です。

法務部門におけるDeep Researchの具体的な活用場面

法務部門では、日常的に法令調査や判例リサーチ、社内への報告資料作成など、多岐にわたる情報収集業務が発生します。ここでは、Deep Researchが特に有効と考えられる具体的な活用場面を紹介します。

法令・規制動向の一次調査

最新の法改正情報の収集は、法務部門にとって欠かせない業務です。Deep Researchを活用することで、以下のような調査を効率化できます。

  • 最新の法改正情報の収集:特定の法分野における最近の法改正や施行時期、実務への影響などを整理する
  • 業界別の規制トレンド把握:金融業界における暗号資産規制、ヘルスケア業界における薬機法改正など、特定業界の規制情報を収集する
  • 他国・他地域の比較法調査:GDPR(EU一般データ保護規則)と日本の個人情報保護法の比較など、海外法制度の調査する

ただし、得られた情報はあくまで調査の段階であり、最終的にはe-Gov法令検索や所管官庁の公式サイトなど、一次情報源での確認が必要です。

判例のリサーチ補助

Deep Researchは、特定の法的論点に関する判例を複数の情報源から横断的に収集し、その傾向や判断基準を整理したレポート形式で出力できます

たとえば、「不正競争防止法における営業秘密侵害の裁判例」というテーマで調査を依頼すれば、関連する判例の概要、主要な判断基準、実務上の留意点などがまとめられた形で得られるため、手作業で複数の判例データベースや解説記事を渡り歩く手間を省けます。

また、自社が直面している法的問題と類似した事案について「どのような裁判例が存在するのか」「どのような論点が争われたのか」を効率的に把握できる点も、Deep Researchの強みです。これにより、法務相談への初期対応や、社内への報告資料作成における情報収集の時間を大幅に短縮できます。

社内への回答・報告資料の叩き台作成

法務部門には、事業部門からの法務相談や経営層への報告など、さまざまな回答・報告業務が発生します。Deep Researchは、こうした資料作成の叩き台を作成することに活用できます。

法務相談に対する初期回答案の作成では、事業部門から「新規事業における個人情報の取扱いについて法的留意点を教えてほしい」といった相談があった際に、Deep Researchで関連する法令・ガイドライン・実務上の留意点などを収集し、回答の骨子を作成できます。また、複雑な法的問題に対しては「どのような論点があるのか」「それぞれの論点について何を調べるべきか」といった情報をわかりやすくまとめたメモの作成にも活用できます。

取締役会や経営会議向けの資料作成においても、コンプライアンス強化策や法改正への対応方針といった特定のテーマについて必要な情報を収集し、報告資料の叩き台とする場合に活用できます

契約書・契約書レビューにおけるリサーチ補助

契約書作成や契約書のレビューにおいても、Deep Researchは情報収集の補助として活用できます。

たとえば「SaaS契約における知的財産権条項の標準的な内容」といったテーマで調査を依頼すれば、複数の情報源から関連情報を収集し、特定の業界や取引類型において一般的に用いられている契約条項の傾向を把握できます。

さらに、経済産業省のモデル契約書や業界団体のガイドラインなど、契約書作成に参考となる公的文書や実務解説を効率的に収集できます

Deep Research利用時の限界とリスク

Deep Researchは便利なツールですが、法務業務で活用する際には、その限界とリスクを正確に理解しておく必要があります。

ハルシネーション(誤情報の生成)のリスク

生成AIの課題として知られるハルシネーション(誤情報の生成)は、Deep Researchにおいても発生するリスクがあります。

最も注意すべきは、存在しない判例・法令の引用です。Deep Researchが「○○地方裁判所令和○年○月○日判決」といった形で判例を引用していても、実際にはそのような判決が存在しない場合があります。

また、引用元URLの誤記・リンク切れも頻繁に発生します。Deep Researchは引用元URLを示しますが、そのURLにアクセスしても該当する情報が見つからない、あるいはリンク先が存在しないといった問題が発生することがあります。

この他にも、元の情報源では限定的な文脈で述べられていた内容を、Deep Researchが一般的な原則として解釈してしまう情報の解釈違い・文脈の誤認も起こり得ます。

これらのリスクを踏まえると、Deep Researchの出力結果をそのまま信頼することは危険であり、必ず検証プロセスを経る必要があります。

引用元・根拠の信頼性の問題

Deep Researchが参照する情報源の信頼性にも注意が必要です。

Deep Researchは法律専門メディアや解説記事などの二次情報を主な情報源としています。これらの二次情報は、元の一次情報(法令原文、判例原文、官公庁の公式発表など)を要約・解説したものであり、解釈が加わっていたり、情報が簡略化されていたりする可能性があります。

たとえば、法令については官報やe-Gov法令検索が一次情報源ですが、Deep Researchが参照する解説記事では、法令改正の施行時期や経過措置について不正確な情報が含まれている場合があります。また、Deep Researchが参照した情報が古いバージョンのものであり、最新の法改正や規制変更が反映されていないケースもあります。

法的判断・結論を代替できない前提

Deep Researchは、あくまで「調査補助ツール」としての位置づけであり、法的判断や結論を代替するものではありません

法務業務においては、個別の事案における法的リスクの評価、契約条項の妥当性判断、コンプライアンス対応の方針決定など、専門的な法的判断が求められます。これらの判断は、法令の文言だけでなく、判例の蓄積、学説の動向、自社の事業実態など、多様な要素を総合的に考慮して行う必要があります。

Deep Researchは情報収集の手助けはできますが、最終的な法的判断は人が行う必要があります。特に重要な取引や高リスクな案件については、社内の法務担当者による専門的なレビューや、必要に応じて外部の弁護士への相談が不可欠です。

誤情報を防ぐための検証フローと実務上のルール

Deep Researchを法務業務で安全に活用するためには、誤情報を防ぐための検証フローと実務上のルールを確立することが不可欠です。

引用・根拠の検証手順(3ステップ)

Deep Researchの出力結果を検証する際には、以下の3ステップで確認を進めることが推奨されます。

ステップ1: 引用元URLへの直接アクセス

まず、Deep Researchが示した引用元URLに実際にアクセスし、リンク先が実在するかを確認します。リンク切れやエラーページが表示される場合は、その情報の信頼性に疑問があると判断すべきです。また、リンク先が実在する場合でも、Deep Researchが引用した内容が実際にそのページに記載されているかを照合します。引用箇所が見つからない、あるいは引用内容と元の記載が異なる場合は、誤情報の可能性があります。

ステップ2: 一次情報源での再確認

引用元URLで情報を確認した後は、必ず一次情報源で再確認を行います。判例については、裁判所のウェブサイトや判例データベース(D1-Law.com「判例体系」や LEX/DBインターネットなど)で原文を確認します。法令については、e-Gov法令検索で最新の条文を確認し、改正履歴や施行時期も併せてチェックします。規制や行政指導については、所管官庁の公式サイトで通達やガイドラインの原文を確認します。この一次情報源での確認により、Deep Researchが参照した二次情報に含まれる解釈の誤りや情報の古さを発見できます。

ステップ3: 専門家によるリーガルチェック

一次情報源での確認後も、解釈の妥当性や実務への適用可能性については、専門家によるレビューが必要です。社内の法務担当者による専門的なチェックを行い、必要に応じて外部の弁護士に相談します。特に、重要な取引や高リスクな案件については、このステップを省略せず、必ず専門家の判断を仰ぐことが重要です。

情報収集時の留意点

Deep Researchを用いて情報を収集する際には、以下の点に留意することで、より正確な情報を得ることができます。

  • 複数の検索クエリで結果の一貫性を確認:同じテーマについて異なる表現で複数回調査を依頼し、結果に一貫性があるか確認
  • 情報の公開日・更新日を必ずチェック:特に法令や規制に関する情報は、改正により内容が変わる可能性があるため、最新の状況を反映しているか確認
  • 公式情報源を優先的に参照:調査依頼時に「○○省の公式サイトを参照してください」と一次情報元となるようなサイトや団体を指定することで、より信頼性の高い情報を得られる可能性が高まる

機密情報・個人情報の管理とルールの策定

Deep Researchを法務業務で活用する際には、機密情報や個人情報の管理が重要な課題となります。

Deep Researchに入力してはいけない情報

法務部門が取り扱う情報の中には、外部のAIサービスに入力してはいけない情報が多く存在します。AIの学習に入力した情報が利用されない設定(オプトアウト)を行っていても、データが一定期間サーバーに保存されている場合やシステムの脆弱性による不正アクセスがある場合などのリスクが完全にはゼロになりません。

  • 顧客の個人情報・機密情報取引先の担当者名、連絡先、事業内容の詳細など
  • 未公表のM&A・契約情報公表前のM&A案件の詳細、契約交渉中の条件、未発表の事業提携情報など
  • 社内限定の法務意見書特定の案件について作成した法務意見書や社内のリーガルチェック結果
  • 係争中の案件詳細現在進行中の訴訟や紛争の詳細、相手方との交渉内容など

これらの情報を誤って入力しないよう、明確なルール設定と周知が必要です。

安全な利用のための社内ルール設定例

Deep Researchを法務部門で安全に利用するためには、組織的なルール設定が推奨されます

入力禁止とする情報については、法務部門内のガイドラインやチェックリストとして文書化し、部門内の全メンバーに周知することが重要です。具体的な事例を示すことで、判断に迷うケースを減らすことができます。また、Deep Researchの利用は調査や情報収集のフェーズに限定し、最終的な書面(契約書、法務意見書、取締役会資料など)を作成する前には、必ず複数の担当者によるレビュー工程を設けることで、誤情報が最終成果物に混入するリスクを低減できます。

さらに、法務部門内で誰が・何を・いつ調査したかの記録を残す利用ログ・履歴の管理により、問題が発生した際の原因究明や、不適切な利用の抑止につながります。加えて、Deep Researchの限界と適切な使い方について法務部門内で定期的な研修を実施し、メンバーのリテラシーを向上させることも重要です。

データの取り扱いとセキュリティ確認

Deep Researchを提供する生成AIサービスのデータ取り扱いポリシーを確認することも重要です。

利用する生成AIサービスの利用規約を確認し、入力データがAIの学習に利用されるかどうかを把握する必要があります。サービスによって異なるため、導入前に必ず確認することが求められます。また、入力したデータがどの程度の期間保存されるのか、削除を依頼できるのかといったデータ保存期間・削除ポリシーについても確認が必要です。自社のセキュリティポリシーと照らし合わせて利用可否を判断します。

これらの確認を怠ると、意図せず機密情報が外部に流出したり、データが不適切に利用されたりするリスクがあるため、導入前の十分な検討が必要です。

法務特化型AIツールという選択肢:「LegalOnアシスタント」の紹介 

汎用的な生成AIが提供するDeep Researchの他に、法務業務に特化したAIツールも選択肢として検討する価値があります。

法務AI「LegalOn」に搭載された「LegalOnアシスタント」は、検索範囲を「LegalOn上の契約書・案件情報」または「Web上の公開情報」から指定し、契約書の内容確認、要約、条文整理、法律一般に関する質問などを行える機能です。

Microsoft社のAzure OpenAI Service(ChatGPT API)を利用しており、LegalOn外に送受信されるデータは暗号化され、AIの学習には利用されません。

汎用的な生成AIとは異なり、情報の信頼性とセキュリティを重視した設計となっているため、法務業務における情報確認・整理の補助ツールとして有力な選択肢となります。

まとめ:Deep Researchは「調査の出発点」として活用し、検証を徹底する

Deep Researchは、多段階リサーチと引用元の明示により、法務部門における調査業務を効率化できる可能性を持つ機能です。法令・規制動向の一次調査、判例リサーチの補助、社内への回答・報告資料の叩き台作成など、一次調査・情報収集フェーズでの活用が特に有効といえます。

ただし、ハルシネーション(誤情報生成)のリスク、引用元・根拠の信頼性の問題、法的判断を代替できない限界など、Deep Researchには明確な制約が存在します。そのため、引用元URLの直接確認、一次情報源での再確認、専門家によるレビューといった検証フローを徹底することが不可欠です。

重要なのは、AIはあくまで「調査の出発点」であり、最終的な判断は人が行うという原則を徹底することです。


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Legal AI Insight 編集部
執筆

Legal AI Insight 編集部

 

法務特化型AI「LegalOn」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Legal AI Insight-リーガルテックとリーガルオペレーションの最前線を届ける知見メディア-」を編集しています。

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