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アジア6カ国における契約書言語の法的規制と実務(インドネシア・ベトナム・中国等)

アジア6カ国における契約書言語の法的規制と実務(インドネシア・ベトナム・中国等)
この記事を読んでわかること
    • 言語規制の特定:インドネシア等の現地語が法令上必須な国と、シンガポールのように英語の契約書のみで十分である国の違い
    • 実務的な言語選択: 将来的な裁判や行政当局への提出を見据えた契約書における言語選択
    • 実務的な併記・優先順位:トラブルを防ぐための二言語併記や、解釈の齟齬を防ぐ優先言語条項

日本法人にとって、現地企業との契約における言語選択は、契約の法的有効性や実務上の有用性に関わります。本記事では、タイ、ベトナム、韓国、シンガポール、中国、インドネシアの6カ国を対象に、現地語の使用を義務付ける法律の有無の整理と実務上の二言語併記の取扱いや優先条項を紹介します。


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山本 大輔
執筆

山本 大輔

One Asia法律事務所ハノイオフィス代表/日本法弁護士

弁護士登録後に大江橋法律事務所(東京事務所)での勤務、アメリカでのロースクール留学・法律事務所研修を経て、2024年よりベトナムに移住し、One Asia法律事務所ハノイ・ホーチミンオフィスにて勤務。ベトナム現地子会社のコーポレート、契約書交渉、M&A、内部監査、労働、紛争解決を含めた幅広い業務に従事している。

西谷 春平
執筆

西谷 春平

One Asia 法律事務所/日本法弁護士

2019年立命館大学法科大学院終了。2020年弁護士登録。東京事務所での日本法務全般およびインドを中心とする南アジア案件を担当。前職ではマレーシアおよびインドに駐在し、インドオフィスの立ち上げにも関与。One Asia加入後も、引き続き、現地実務に根ざした経験を活かし、日系企業の南アジア進出・事業運営の法的支援を行っている。

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1 各国の言語規制と実務上の取り扱い

1.1 インドネシア

1.1.1 法規制

インドネシアは、本記事の対象とした6カ国のうちで唯一、原則として全ての契約書の言語を規制する法律が存在します。国旗、言語、国章および国歌に関する法律(以下「言語法」といいます。)によれば、契約当事者の少なくとも一方がインドネシア法人・個人の場合、インドネシア語で契約書を作成する義務が課されています。同法は強行法規であり、契約書の準拠法にかかわらず適用される可能性があります。つまり、仮に契約書において準拠法を日本法にしていても、契約当事者にインドネシア法人・個人がいる場合には、言語法が適用される可能性があります。過去には、インドネシア法人・個人が契約当事者の契約書が英語のみで作成されていた件で、当該契約書が無効であると判断した裁判例もあります。

1.1.2 実務上の対応

以上を踏まえて、契約当事者の少なくとも一方がインドネシア法人・個人の契約書においては、インドネシア語版を作成する必要がありますが、実務上多くの日系企業は併せて英語版を作成しています。この場合、インドネシア語版と英語版に矛盾があった場合にどちらの言語版を優先するかという、いわゆる優先言語条項を定めることが必要になります。インドネシアにおいて外国語を優先言語に指定することが認められているため、実務上は英語を優先言語とすることが一般的です。

実際の契約交渉においては、英語版を元に相手方と条項の内容を議論し、英語版の内容が確定した後に、インドネシア語に翻訳し、両言語併記版を作成するなどして、英語を優先言語とする旨の優先言語条項を設けることが一般的です。

1.2 ベトナム

1.2.1 法規制

ベトナムでは、一部の法律や実務上必要とされる場合を除き、原則として契約書の言語を自由に選択することができます。契約書の言語をベトナム語としなければならない例として、建設契約、消費者契約、雇用契約、不動産契約が挙げられます。

NDAを含めて一般的な法人間の商取引の契約書については、英語版のみの契約書を作成することも一般的に行われています。

1.2.2 実務上の対応

法令上、ベトナム語での作成が要請されない契約書であっても、特に税務申告など、行政当局との関係で、最終的にはベトナム語訳が必要になる場面があります。そのため、実務的には、最初から英語版だけでなくベトナム語版も作成する(二言語併記を含む。)又は英語版で正式な契約書を作成して、ベトナム語版でその概要を作成する、ということも見られます。

1.3 タイ

1.3.1 法規制

一部の例外を除き、契約書をタイ語で作成しなければならないとする法律は存在しません

1.3.2 実務上の対応

基本的に、契約書の言語は英語及び日本語で問題ありません。ただし、不動産売買契約や抵当権設定契約など行政当局へ提出する必要がある契約書は、タイ語版を作成する必要があります。また、タイの裁判所ではタイ語のみが公用語であるため、英語の契約書は基本的にタイ語に翻訳して提出する必要があります

1.4 シンガポール

1.4.1 法規制

契約書を特定の言語で作成しなければならないとする法律は存在しません

1.4.2 実務上の対応

シンガポールは英語が公用語であり、英語で契約書を作成するのが一般的です。言語は自由に選択できるため、準拠法を日本法・紛争解決機関を日本の地方裁判所として、契約書を日本語のみで作成する場合もあります。

1.5 中国

1.5.1 法規制

一部の例外を除き、契約書を現地語で作成しなければならないとする法律は存在しません

1.5.2 実務上の対応

中国においては英語が読めない人がそれなりにいるため、英語のみの契約書を作成した場合、その解釈において後で紛争になる場合があります。実務的には、中国語版と日本語版を用意し、双方の効力を同等にしておくことが一般的です。仮に文言において日本語版と中国語版に齟齬があった場合、中国民法の規定に従って、契約の関連条項、性質、目的、信義誠実の原則等に基づき解釈することとなります。

また、行政当局へ提出する必要がある契約書は、中国語版を作成する必要があります。

1.6 韓国

1.6.1 法規制

一部の例外を除き、契約書を現地語で作成しなければならないとする法律は存在しません

1.6.2 実務上の対応

韓国語又は英語併記の契約書を作成することが一般的です。外国語のみの契約書を作成する場合でも、韓国語訳を添付して両言語の効力を同等とする旨を明記することが多く、紛争における証拠提出の観点からもそのような対応が望ましいです。

2 日本法人が現地で契約書を作成する際の留意点

日系企業が上記のようなアジア各国の契約当事者との間で契約を締結する際、以下のステップで契約書の言語を選択することが推奨されます。

2.1 法的強制力の確認

まず、インドネシアのように、現地語の記載がないと契約書の効力自体が無効になる可能性がある法規制があるかどうかを確認します。インドネシアでの契約においては、インドネシア語版の作成が必須です。ベトナムのように、消費者との契約書はベトナム語で作成しなければならないといった、特定の契約類型について契約書の言語を規制する国もあることに留意が必要です。

2.2 二言語併記の採用

例えば現地語と英語で契約書を作成する場合、1つの契約書において単一言語(英語のみ)で作成することもありますが、それぞれの言語の2つの契約書ができてしまい管理面での複雑さがあることから、1つの契約書において二言語を併記する形式が採用されることが一般的です。

二言語併記によって、紛争時の翻訳コストを削減できるといったメリットがあります。

2.3 優先条項の設置

契約書を複数言語で作成した場合には、万が一両者の内容に齟齬があった場合に備えて、どの言語の契約書が優先するのか、または同等とするのかを定めておくことが必須です。中国と韓国においては、両言語の効力を同等とする取扱いが良く行われています。

以下は、英語を優先させる場合に設ける優先条項(参考)となります。


(Language)

This Agreement is executed in the English language and translated into the ●● language. In the event of any inconsistency between the text of the English language version and the ●● language version of this Agreement, the English language version shall be prevailing and the ●● text shall be deemed to be amended to comply with the English version.


2.4 紛争解決条項との整合性

契約書における言語条項は、紛争解決条項と密接に関連します。例えばシンガポール国際仲裁センター(SIAC)、ベトナム国際仲裁センター(VIAC)を利用する場合、仲裁言語を英語とすることが一般的です。逆に、仲裁言語によっては、仲裁人の選定時に当該仲裁言語を扱える仲裁人が限られてしまうことがあります。

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LegalOn製品の詳細は、ぜひ以下よりダウンロードできる資料をご確認ください。

(執筆日:2026年2月)※掲載内容は執筆当時のものです。


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