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AIガバナンスとは? 法務担当者に求められるリスク回避と運用のポイントを解説

AIガバナンスとは? 法務担当者に求められるリスク回避と運用のポイントを解説
この記事を読んでわかること
    • AIガバナンスの概要
    • 法務におけるAI利活用のリスク
    • 国内外のAIガバナンスに対する最新動向
    • AIガバナンス設計の実務ステップ
    • 法務AIの運用チェックポイント

業務へのAI活用が広がる一方で、「どこまで使ってよいのか」「法的な問題はないのか」と不安を抱える法務担当者も多いのではないでしょうか。近年は、AIの利活用そのものだけでなく、リスクを適切に管理するための「AIガバナンス」の重要性が高まっています。

本記事では、AIガバナンスの基本的な考え方を整理したうえで、法務が関与すべき理由や具体的な設計・運用のポイントを解説します。国内外の最新動向も踏まえ、実務に活かせる視点を提示します。


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AIガバナンスとは

AIガバナンスとはAIの導入や利用にあたり、法令遵守や倫理、説明責任などを踏まえて運用を統制する仕組みのことです。近年、生成AIを含むさまざまなAI技術が業務に取り入れられる中で、利便性と同時に新たなリスクが顕在化しています。例えば、学習データや出力結果を巡る著作権侵害、個人情報の不適切な取り扱い、判断根拠が説明できないことによる信頼低下などが挙げられます。

こうした課題は、技術部門や事業部のみで対処することが難しく、法令解釈や責任範囲の整理、社内ルールへの落とし込みといった観点は、法務が関与することで体系的な整理が必要です。法務がAIガバナンスに関与することで、企業はリスクを過度に恐れることなく、安心してAI活用を進められる基盤を整えやすくなります。

法務が把握すべきAI利活用に伴う主なリスク

AI活用に伴うリスクは多岐にわたるため、法務として全体像を把握しておく必要があります。ここでは、特に重要となるリスクの種類を整理します。

著作権・個人情報などの法的リスク

AIを業務で利用する際、まず問題となりやすいのが著作権や個人情報に関するリスクです。特に、生成されたアウトプットが既存の著作物と類似していないか、意図せず著作権侵害を引き起こしていないかといった点は、法務として確認が欠かせません。

また、業務データをAIに入力する過程で、個人情報や営業秘密が含まれる場合もあります。利用するAIの種類や提供形態によっては、情報の管理方法や外部提供の有無が問題となることもあるため、事前の整理が重要です。

この他にも、AI活用を前提とした業務委託やサービス利用においては、契約上の責任分担を明確にしておかなければ、トラブル発生時に想定外の責任を負う可能性があります。

説明責任・透明性に関するリスク

AIを業務判断に活用する場合、その判断内容や結果を人が説明できるかどうかが重要なポイントとなります。AIがハルシネーション(もっともらしい誤り)を含む回答をするリスクや、関与したプロセスで結論のみが提示されその妥当性や前提条件を説明できない状態では、社内の合意形成や顧客対応に支障をきたす恐れがあります。

特に、契約判断やリスク評価、対応方針の決定などにAIの分析結果を用いている場合「なぜその判断に至ったのか」を理解し、説明できる体制が求められます。判断根拠が不明確なままAIの結果に依存すると、監査や紛争対応の場面で説明が行き届かず、組織としての意思決定プロセスの透明性が問われることになりかねません。

そのため、AIの利用有無にかかわらず、最終的な判断責任は人にあることを前提に、判断内容を説明できる運用設計が不可欠です。透明性を確保できないままAI活用を進めることは、法的リスクにとどまらず、業務判断そのものへの信頼低下に繋がる可能性があります。

ガバナンス不備がもたらす経営リスク

AIの利用に関する明確なルールが存在しない場合、現場ごとに判断基準がばらつき、想定外の使われ方が広がる可能性があります。その結果、問題が発生した際に責任の所在が不明確になり、経営判断や内部統制にも悪影響を及ぼします。

また、不適切なAI利用が外部に露見した場合、法的責任以前に、企業のブランドや社会的信頼が損なわれるリスクも無視できません。ガバナンスの不備は、単なる内部統制の問題にとどまらず、経営リスクとして捉える必要があります。

日本におけるAIガバナンスの最新動向と企業実務への影響

日本では包括的なAI規制法はまだ整備されていませんが、実務に影響を与える指針が示されています。ここでは、2026年時点で押さえておくべき前提を整理します。

AI事業者ガイドラインの概要と位置づけ

2024年に総務省・経済産業省から公表された「AI事業者ガイドライン」は、AI開発者・提供者・利用者の3類型に分けて、望ましい対応を示しています。このガイドラインには法的拘束力はありませんが、企業行動の指針として事実上の影響力を持っています。

特に利用者の立場にある企業にとっては、AIの利用目的の明確化やリスク評価、説明責任への配慮といった点が重要です。法務としては、こういったガイドラインを「守るべき水準」として捉え、自社のガバナンスにどう落とし込むかを検討する必要があります。

ガイドラインが企業対応に与える影響

ガイドラインの存在により、企業には「知らなかった」「決まりがなかった」という言い訳が通用しにくくなっています。実務上は、ガイドラインを参考にしながら、自社の事業内容やAIの利用状況に応じた対応を整えることが求められます

また、将来的な法制化を見据えると、早い段階からガバナンス体制を構築しておくことは、後追い対応の負担を軽減する意味でも有効です。法務はAIガバナンスについても、こうした中長期的な視点を持って対応を検討する役割を担う必要があります。

海外のAI規制・判例から見るガバナンスの考え方

AIに関する規制や判例は海外で先行しており、日本企業にも影響を与えています。ここでは、代表的な動向を整理します。

EU AI法(AI Act)の特徴と域外適用

EUでは、世界に先駆けて包括的なAI規制法であるAI法が成立し、2024年後半から段階的に適用が開始されています。この法律では、ハイリスクAIの定義や禁止される利用形態が明確に示されています。EU域内で事業を行う日本企業や、EU市場向けにサービスを提供する企業は、この影響を受ける可能性があり、既に一部の規定は順守義務が発生しています。

法務としては、EUの考え方を単なる海外事情として捉えるのではなく、日本におけるガバナンス設計の参考として位置づける視点が必要です。

米国・中国の規制・判例動向

米国では、連邦レベルの包括的規制が議論される一方で、州レベルでの法制化が先行しています。「コロラドAI法」は米国初となる包括的な州単位のAI規制法であり、AIサービス提供者・開発者に対して消費者が差別的な取り扱いを受けることを避けるための合理的な注意を求めるものです。企業は連邦の動向だけでなく、こうした州ごとの「ハードロー(法的拘束力のある法律)」への適応を迫られています。

一方、中国では「生成AIサービス管理に関する暫定弁法」に基づく規制運用が進むと同時に、司法判断にも動きがあります。北京インターネット裁判所がAI生成画像に著作物性を認める判決(2023年11月)を出しており、「AI生成物に原則として著作権を認めない」とする米国著作権局の見解とは対照的な判断が示されています。

これらの動向は、AIを巡る責任の所在や事業者の義務が、現状では国や地域によって異なるものの、各国で対応の検討や実施が進みつつあることを示しています。

海外動向を日本企業のAIガバナンスにどう生かすか

海外の規制や判例は、日本のガイドラインと直接一致するものではありませんが、共通する考え方も多く見られます。説明責任や透明性の確保、リスク評価を重視する姿勢は日本企業にとっても有益です。

既にグローバル展開をしている場合や視野に入れている企業の場合、国内基準だけでなく、海外動向を踏まえたガバナンス設計を行うことが、将来的なリスク低減に繋がります

AIガバナンス設計のステップ

AIガバナンスを実効性のあるものにするためには、段階的な設計が重要です。ここでは、法務が主導して進めるAIガバナンス設計の基本的なステップを整理します。

ステップ1:AI利用目的・範囲の整理

AIガバナンス設計の出発点となるのが、AIを「どの業務で」「どの範囲に」適用するのかを明確にすることです。具体的には社内で「どの部門が、どの業務プロセスにAIを導入しようとしているのか」や、AIで扱うデータの種類や利用者の範囲までを細かく把握します。これは単に導入の有無を判断するためだけでなく、それぞれの用途に応じて必要となるガバナンス要件が変わるためです。

例えば、社内文書の要約や定型作業の効率化に使う場合と、顧客データを活用した契約リスク分析に使う場合とでは、扱う情報のセンシティビティや法的な配慮が異なります。これらの違いを明確にすることで、後続のリスク評価やポリシー設計の基準が定まりやすくなります。

法務は、この段階で利用可否の判断基準や留意点の整理表を作成し、関係部門と合意を形成する役割を担います。利用目的ごとにリスクレベルを分析し、導入前に確認すべき事項や関係部署の責任区分を明文化することが、実務での第一歩です。

ステップ2:リスク評価と検証プロセスの構築

AI利用には多様なリスクが含まれるため、導入前後の段階で体系的なリスク評価と検証プロセスを設けることが欠かせません。まずは、AI利用によって発生し得る法的、倫理的、技術的なリスクを洗い出します。具体的には、データの偏りやバイアス、プライバシー侵害、不正利用、セキュリティ上の脆弱性などを想定し、リスクの影響度と発生可能性を評価するフレームワークを用いることが推奨されます。

評価プロセスを設計する際には、単発の評価に留めず、PDCAサイクルを回す仕組みとして設計することが効果的です。初期段階の評価(Plan)→ 実装(Do) → 定期的な検証(Check) → 改善(Act)という一連の流れを繰り返すことで、AIの利用状況やリスクプロファイルの変化に対応できます。

また、評価結果を定量化・記録する仕組みを整えることで、監査対応や説明責任を果たしやすくなります。法務はこのプロセスの設計に関与し、リスク評価の基準・手順・報告様式を策定する役割です。これにより、将来的な見直しや他部門への共有がスムーズになります。

ステップ3:社内ルール・規程への落とし込み

リスク評価と検証プロセスを経た後は、実務で活用可能な形に社内ルールや規程として落とし込むことが重要です。これは単に禁止事項を列挙するだけではなく、AI活用における具体的な手続きや手順、責任区分を明示した「利用ポリシー」として整備することを指します。

例えば、以下のような要素を含んだ規程が考えられます。

  • 許可されたAI利用ケースとその条件
  • データ取扱い基準(個人情報や機密情報の条件・匿名化・利用範囲など)
  • 承認フロー(AI利用前の審査・承認の段階)
  • 監査ログや記録保管のルール
  • 異常検出時の対応手順や報告フロー

これらは、業務部門が実際に運用する際の「ガイドライン」として機能します。また、役割と責任を明確にすることで、関係者同士の連携が取りやすくなります。社内ルールは定期的に見直されるべきものであり、運用段階での課題を反映させながら継続的に改善していく仕組みを同時に整備することも重要です。

AIガバナンスを形骸化させないための運用チェックポイント

AIガバナンスは、ルールを定めた時点で完結するものではありません。重要なのは、日常業務の中でルールが守られ、想定外の利用が起きていないかを継続的に確認することです。本章では、運用フェーズにおいて法務が押さえるべき具体的なチェックポイントを整理します。

① ルールが現場で遵守されているかの確認

まず確認すべきは、策定したAI利用ポリシーや社内ルールが、実際の業務で守られているかどうかです。

特に、現場主導でAIツールが導入・利用されている場合、ルールの存在自体が十分に認識されていないケースも少なくありません。

  • AI利用前の承認・相談フローが省略されていないか
  • 禁止・制限されている用途で利用されていないか
  • 利用者がポリシー内容を理解したうえで運用しているか

形式的な規程整備にとどまらず、実態としての遵守状況を把握する視点が不可欠です。

② AIの利用状況を把握・可視化できているか

次に重要なのが、AIの利用実態を把握できる状態になっているかどうかです。

誰が、どの業務で、どのAIを使っているのかが不明確なままでは、リスク管理や説明責任を果たすことは困難になります。

  • 利用中のAIツール・サービスが一覧化されているか
  • 利用部門・利用目的・取り扱う情報の種類が整理されているか
  • ログや記録が一定期間保存されているか

想定外の使われ方や、当初の利用目的から逸脱した運用を早期に把握するためにも、可視化の仕組みはガバナンス運用の中核となります。

③ 想定外のリスクや運用上のズレが生じていないか

AIの利用が広がるにつれ、導入当初には想定していなかった使い方やリスクが顕在化することがあります。そのため、定期的に運用状況を点検し、ズレや問題が生じていないかを確認することが重要です。

  • 利用範囲が当初の想定を超えて拡大していないか
  • 新たなデータ種別(個人情報・機密情報など)が扱われていないか
  • 業務判断への依存度が過度に高まっていないか

法務は「導入時点の前提が今も成り立っているか」という視点で点検を行う必要があります。

④ トラブル発生時の対応フローが機能するか

AI利用に起因するトラブルは、完全に防ぐことはできません。重要なのは、問題発生時に迅速かつ適切に対応できる体制が整っているかです。

  • 問題の発生時、誰が最初に報告を受けるのか
  • 法務・IT・広報など関係部門の連携フローは明確か
  • 利用停止・原因調査・再発防止の判断基準が定められているか

事前に対応フローを定めておくことで、混乱を最小限に抑え、説明責任も果たしやすくなります。

⑤ 定期的な見直し・更新が行われているか

先に述べた通りAIガバナンスは一度作って終わりではなく、継続的な見直しが前提となります。技術動向、ガイドライン、社内のAI活用状況は常に変化するため、ルールや運用もそれに合わせて更新する必要があります。

  • 定期的なレビューの機会が設けられているか
  • 最新の動向に沿った運用体制になっているか
  • 社内周知や教育が継続的に行われているか

法務は、これらの運用状況を俯瞰し、ガバナンスが形骸化しないよう調整役を担う存在となります。

このように、運用フェーズでは「守られているか」「把握できているか」「機能しているか」という観点でチェックを行うことが重要です。

AIガバナンスを実効性のあるものとするためには、法務による継続的な点検と改善が欠かせません。

AIガバナンス対応を支援するLegalOnの活用

AIガバナンスの検討や運用を進める中で、法務部門の業務負担が増大することも少なくありません。こうした状況において、法務業務全体の効率化を通じてAIガバナンス対応を後押しする手段の一つとして、法務AI「LegalOn」を活用することができます。

LegalOnは、契約審査や案件管理などの法務業務をAIで支援するプラットフォームです。日常的な確認作業や情報整理を効率化することで、AIガバナンスの整備や運用検討に、より多くの時間を割ける環境づくりに寄与します。

また、セキュリティに配慮された環境でAI機能を活用できるため、機密性の高い法務情報を扱う業務においても、安心して利用できる設計となっています。

まとめ

AIガバナンスは、単なる規制対応ではなく、AIを安全かつ継続的に活用するための基盤です。 法務には、国内外の動向を「守るべき水準」として捉え、自社に適したルールを設計・運用する役割が求められます。重要なのは、一度作って終わりにせず、利用状況の可視化や定期的な見直しを通じて体制を磨き続けることです。 法務主導の適切なガバナンスこそが、企業の信頼を守り、「攻めのAI活用」を実現する鍵となります。


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Legal AI Insight 編集部
執筆

Legal AI Insight 編集部

 

法務特化型AI「LegalOn」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Legal AI Insight-リーガルテックとリーガルオペレーションの最前線を届ける知見メディア-」を編集しています。

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