資料請求

例文付き|期限の利益喪失とは?リスク・手続き・注意点などを解説

例文付き|期限の利益喪失とは?リスク・手続き・注意点などを解説
この記事を読んでわかること
    • 期限の利益喪失とは何か
    • 契約における期限の利益喪失条項の必要性や定め方
    • 期限の利益を喪失した場合のリスク
    • 期限の利益喪失について注意すべきポイント

代金の支払いや借入金の返済などの契約上の義務(=債務)を履行しないと、期限の利益を喪失することがあります。期限の利益を喪失したときは、まだ期限が来ていなかった債務も一括で履行しなければなりません。

特に金銭消費貸借契約などでは、期限の利益喪失条項を明確に定めることが重要です。期限の利益喪失条項の役割や要点について、法務実務の観点から解説します。


【法務知識の習得にも使える法務向けAIツール】 

LegalOnは、AIレビューの指摘事項に条文趣旨や実務上の留意点の解説が付されており、さらに、ホーム画面から法律事務所による専門的な解説記事にもアクセスできます。実務と学習を同時に実現する次世代の法務向けAIツールです。

 詳しい活用方法は以下の資料を無料ダウンロードしてご確認ください。

実務を通して法務の知識を学べるAIプラットフォーム

<関連記事>

金銭消費貸借契約書とは?ひな形・収入印紙・記載すべき事項・締結時の注意点を解説

賃貸借契約とは?企業が建物を借りる・貸す際の実務上の留意点、流れなどを解説!

定期建物賃貸借契約書の見方は?契約期間や成立要件などわかりやすく解説

売買契約書とは|ひな形や記載事項、締結時のポイント、印紙税について解説

新リース会計基準とは?対象企業・適用時期・経理/財務/法務実務への影響を解説

阿部 由羅
執筆

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所 代表弁護士

西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。 

https://abeyura.com/

「ひと目でわかる要チェック条文 売買契約書編」

無料でダウンロードする

期限の利益喪失とは

「期限の利益喪失」とは、契約上の義務(債務)を履行しなかったことにより、本来なら将来履行すればよかった債務を直ちに履行しなければならなくなることです。

特に金銭消費貸借契約(お金の貸し借りに関する契約)では、債務者が返済を滞納したことによる期限の利益喪失がよく問題になります。

期限の利益とは

「期限の利益」とは、「期限が到来するまでの間、債務を履行しなくてよい」という利益です。

金銭消費貸借契約(お金の貸し借りに関する契約)を例に挙げると、借主は返済期日が来るまでの間、借りたお金を返す義務を負いません。したがって、借入日から返済期日までの間、借主は借りたお金を自由に使えます。これが「期限の利益」です。

期限の利益を失うと、借りたお金全額の返済期日が直ちに到来し、借主は貸主に対して一括返済を行わなければなりません。

期限の利益喪失の目的

金銭消費貸借契約などの契約では、一定の条件を満たす場合に債務者の期限の利益を喪失させる条項(=期限の利益喪失条項)が定められることがあります。その目的は、できる限り早い段階で債権回収の機会を確保することです。

例えば金銭消費貸借契約において、借主が返済を滞納した場合は、借主の資金繰りが相当苦しいことが窺われます。このままでは、借主は自己破産を申し立てるかもしれません。破産手続きが始まると、貸主は貸したお金をほとんど回収できなくなってしまいます。

借主が資金不足に陥っているにも関わらず、予定どおりの返済期日に従って返済を続けさせるしかないとすれば、貸主は借主の破産を黙って見ているほかありません。しかし、それでは貸主にとって不当に重大な不利益が生じる恐れがあります。

契約で期限の利益喪失条項を定めておけば、返済滞納などが発生した際に借主の期限の利益を喪失させ、直ちに債権全額の回収へ動き始めることができます。早期に着手すれば、少しでも多くの債権を回収できる可能性が高まります。

期限の利益喪失が問題となる契約の例

期限の利益喪失が問題となるのは、主に当事者が負う債務が分割払いとされているものや、履行期限が将来の時点とされている契約です。

例えば次に挙げる契約では、期限の利益喪失条項を定める例がよく見られます。

  • 金銭消費貸借契約→借主が返済を滞納した場合に、貸主が早期に債権を回収できるようにするため、期限の利益喪失条項を定めるのが一般的です。
  • 売買契約→売買代金を分割払いとする場合、または掛払いなどによって後払いとする場合には、期限の利益喪失条項を定めるのが一般的です。
  • 取引基本契約→仕入代金や報酬などを後払いとする場合には、期限の利益喪失条項を定めるのが一般的です。

期限の利益喪失事由の種類

契約に定められる期限の利益喪失事由には、「当然喪失事由」と「請求喪失事由」の2種類があります。

当然喪失事由

「当然喪失事由」とは、発生すると当然の期限の利益が失われる事由です。取引を継続すべきでないことが直ちに明らかとなる重大な事由は、当然喪失事由としておくことで機動的な債権回収が可能となります。

例えば、次に挙げる事由は当然喪失事由として定めるのが一般的です。

  • 支払不能、支払停止等
  • 倒産手続開始の申立て
  • 解散、組織再編行為、事業譲渡、事業の譲受け、組織変更
  • 預貯金債権に関する仮差押え、仮処分、強制執行、滞納処分
  • 債務者の所在不明など

請求喪失事由

「請求喪失事由」とは、発生するだけでは期限の利益を喪失せず、債権者が債務者に対して債務の履行を請求した段階で初めて期限の利益が失われる事由です。比較的軽微な契約違反や、状況によっては解消できる契約違反などは、債権者の判断で取引を継続する道を残すために請求喪失事由とされることがあります。

例えば、次に挙げる事由は請求喪失事由として定める例がよく見られます。

  • 返済の遅延
  • 契約上の義務違反
  • 取引実行前提条件の不充足
  • 表明保証違反
  • 担保権の失効
  • 預貯金債権以外の財産に関する仮差押え、仮処分、強制執行、滞納処分など

契約書における期限の利益喪失の取り扱い

金銭消費貸借契約などの契約においては、期限の利益喪失条項を適切に定めることが重要です。債権者の立場なら速やかに債権回収を始められるか、債務者の立場なら軽微なミスなどによって期限の利益を失うことがないかなどの観点から、期限の利益喪失条項の内容をチェックします。

期限の利益喪失条項を定める必要性

期限の利益喪失条項を定める必要があるかどうかは、契約に基づいて発生する債務の性質によって決まります。

例えば単純な売買契約で、売買代金の支払いと目的物の引渡しを同時に行うものとされている場合は、期限の利益喪失条項の必要性は低いと考えられます。売買の実行後、将来にわたって債務が残ることが基本的にないためです。

ただし同じ売買契約であっても、継続的な取引を前提としている場合は、一定期間の代金を後日まとめて精算するケースがよく見られます(いわゆる「掛払い」)。この場合、売主は代金が不払いとなるリスクを負っているので、期限の利益喪失条項を定めておくことが望ましいです。

締結する契約の内容や性質を考慮して、期限の利益喪失条項を定める必要があるかどうかを判断してください。

期限の利益喪失条項の例文

金銭消費貸借契約における期限の利益喪失条項の例文を紹介します。1項が当然喪失事由、2項が請求喪失事由を定めたものです。


第○条(期限の利益の喪失)

1. 借主は、以下の各号のいずれかに該当する事由が発生した場合には、本契約に基づく一切の債務について当然に期限の利益を失い、貸主に対して直ちに当該債務を弁済しなければならない。

(1)借主が支払不能若しくは支払停止の状態に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき。

(2)借主について破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始その他の倒産手続開始の申立てがあったとき。

(3)借主が解散し、合併、会社分割、株式交換、株式移転若しくは株式交付その他の組織再編を行い、事業を譲渡し若しくは事業を譲り受け、又は組織変更を行ったとき。

(4)借主が貸主に対して有する預金債権につき、仮差押え、仮処分、強制執行又は公租公課の滞納処分があったとき。

(5)借主が所在不明となったとき。


2. 借主は、以下の各号のいずれかに該当する事由が発生した場合には、本契約に基づく一切の債務について、貸主の請求により期限の利益を失い、貸主に対して直ちに当該債務を弁済しなければならない。ただし、前項に定める事由が発生した場合には、前項の規定を適用する。

(1)借主が貸主に対して、本契約に基づく債務を弁済期において支払わずに3営業日を経過したとき。

(2)借主が本契約に基づく義務に違反したとき。

(3)第〇条に規定する取引実行前提条件が、一つでも充足されていないことが判明したとき。

(4)第〇条に基づく借主の表明及び保証が真実でなく、又は不正確であることが判明したとき。

(5)貸主の借主に対する担保権が失効したとき。

(6)借主の財産のうち、借主が貸主に対して有する預金債権以外のものにつき、仮差押え、仮処分、強制執行又は公租公課の滞納処分があったとき。


期限の利益を喪失する(させる)までの流れ

契約上の当然喪失事由が発生したときは、債務者は当然に期限の利益を失います。

債権者は特段の手続きを要することなく、債務者に対して将来分を含めた債務全額の履行を請求できます。また、遅延損害金は当然喪失事由が発生した日の翌日から発生します。

一方、契約上の請求喪失事由が発生したときは、債権者が債務者に対して期限の利益喪失を通知し、債務全額の履行を請求するまでは期限の利益が失われません。期限の利益喪失の通知および履行の請求は、内容証明郵便などの記録が残る方法で行うのが一般的です。

期限の利益を喪失した場合のリスク

期限の利益を喪失すると、債務者は次のリスクを負うことになります。

  1. 債務の一括履行(一括返済)を請求される
  2. 債務全額について遅延損害金が発生する
  3. 訴訟や強制執行に発展する

債務の一括履行(一括返済)を請求される

期限の利益を失うと、債権者から将来分を含めた債務を一括で履行するよう請求されます

分割での支払いもままならない状況で、一括での支払いを求められても、それに応じることは事実上不可能です。一括での支払いに応じることができないと、自己破産手続等の法的整理を検討せざるを得なくなります。

債務全額について遅延損害金が発生する

期限の利益を失った場合、喪失日の翌日から遅延損害金が発生します。遅延損害金の利率は、契約の定めがない場合は法定利率(年3%)、契約の定め(約定利率)がある場合は原則として約定利率に従います(ただし、法律による上限利率が適用されることがあります)。

元本すら支払えないのに、遅延損害金が追加で発生すると、債務の完済は到底不可能になってしまうでしょう。

訴訟や強制執行に発展する

未払いの債権を回収するため、債権者は裁判所に訴訟を提起するかもしれません。訴訟への対応には労力がかかり、弁護士に対応を依頼する場合は費用もかかってしまいます。

また、訴訟で敗訴判決が確定すると、債権者は裁判所に強制執行を申し立てることができるようになります。

強制執行の手続きでは、債務者の財産を差し押さえて強制的に債務の支払いへ充当します。預貯金や重要な財産が差し押さえられると、債務者の事業の運営に重大な悪影響が生じてしまいます。

期限の利益喪失に関する注意点

債務者および債権者がそれぞれの立場で、期限の利益喪失に関して注意すべき主なポイントを紹介します。

債務者|債務の内容や履行すべき時期を正しく把握する

債務者としては、期限の利益を喪失することがないように、債務の内容や履行すべき時期を正しく把握することが重要です。経理部門が中心となって支払いのチェックと管理の徹底が求められます。

債務者|債務不履行が発生しそうになったら、早めに相手方と相談する

資金不足によって債務の支払いが困難となった場合は、早い段階で相手方と相談しましょう。何の連絡もないまま不払いを起こすと、債権者からの信頼を失って深刻なトラブルに発展するリスクが高まります。事情を正直に話して相談すれば、ある程度の期間は支払いを待ってもらえるかもしれません。

債権者|保証人への通知義務に注意する(2020年4月民法改正)

債務者が期限の利益を喪失した債務について保証人がいる場合、債権者は保証人に対する通知義務に留意する必要があります。

主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、喪失を知った時から2カ月以内にその旨を通知しなければなりません(民法458条の3第1項)。通知を行うまでは、保証人に対して遅延損害金を請求できないので注意を必要です(同条2項)。

なお、保証人が法人である場合には上記の規定が適用されず、保証人に対する期限の利益喪失通知は不要です(同条3項)。

実務を通じて法務知識をアップデートできるAIツール

LegalOnは、契約書レビューの過程で表示される指摘事項に、条文趣旨や実務上の留意点に関する解説を付しており、日々の審査業務そのものが学びの機会になる設計です。まさに取り組んでいる案件に直接結びつく解説を確認することで、法務の生きた知識を習得できます。さらに、法律事務所による専門的な解説記事や実務コンテンツにもアクセス可能。単なる業務効率化にとどまらず、組織全体でナレッジを共有・蓄積し、継続的な人材育成を支援します。

<関連記事>

金銭消費貸借契約書とは?ひな形・収入印紙・記載すべき事項・締結時の注意点を解説

賃貸借契約とは?企業が建物を借りる・貸す際の実務上の留意点、流れなどを解説!

定期建物賃貸借契約書の見方は?契約期間や成立要件などわかりやすく解説

売買契約書とは|ひな形や記載事項、締結時のポイント、印紙税について解説

新リース会計基準とは?対象企業・適用時期・経理/財務/法務実務への影響を解説

法務業務を進化させる世界水準の法務AI「LegalOn」

3分でわかる製品資料

LegalOnの特徴や
機能を
わかりやすくまとめています

サービス資料ダウンロード

サービスのUI画面を見ながら
操作感を気軽に体験いただけます

無料デモ体験

法改正などのお役立ち資料を無料で
ダウンロードいただけます

お役立ち資料

法務の実務に役立つセミナーを
開催しています

セミナー情報