業務効率2割改善で「5日以内のレスポンス」を徹底 知財組織における「LegalOn」導入・活用事例
日本ゼオン株式会社
知的財産統括部 事業支援グループグループ長 中村仁 様 知的財産統括部 事業支援グループ 山口美信 様 知的財産統括部 企画管理グループ 浅野祐太 様
- 法務課題:技術契約を年間約1,000件扱う中、メール中心の案件管理による進捗把握の難しさや対応漏れ、人材育成・技能伝承に時間を要することが課題に
- 導入経緯:ベテランの知見を組織資産化し審査品質を標準化する目的で「LegalForce」を導入。その後、案件単位での情報・履歴管理による進捗可視化と管理強化を目的に「LegalOn」へ移行
- 導入効果:契約審査依頼件数が2020年比で約2割増加する中でも、8割超の案件で「5営業日以内のファーストレスポンス」を実現。案件の進捗管理や担当者間の引き継ぎ効率も向上
- 活用事例: 知財メンバーでも過去案件や交渉経緯を参照し適切に契約審査ができるよう、「LegalOn」上に知見を蓄積。さらに、案件情報を一元管理し、RPAで他システムへの差分転記や人事データ連携を自動化
合成ゴムや高機能材料で自動車・電子産業を支える創業75年を超える化学メーカーの日本ゼオン株式会社。同社は2020年2月にAIレビューサービス「LegalForce」を導入し、2025年5月には、案件管理の強化を見据えて法務AI「LegalOn」へと切り替えました。現在は「マターマネジメント」「レビュー」「LegalOnテンプレート」「ユニバーサルアシスト」を活用しています。“知財”のプロフェッショナル集団が契約審査にどう向き合い、組織としてのプレゼンスを高めているのか。知的財産統括部の中村様、山口様、浅野様の3名に、その活用方法を伺いました。
契約審査は知的財産統括部だけで年間約1,000件
(写真左から)山口様、中村様、浅野様
御社の事業内容について教えてください。
中村様 当社は、自動車用タイヤなどに用いられる合成ゴムや高機能樹脂の製造・開発を中心に事業を行う化学メーカーです。カーボンナノチューブなどの新素材開発も手掛け、独自技術で持続可能な社会の実現に貢献しています。2026年4月以降は経営体制強化のためCXO制を導入し、大規模な組織改編を行うことで、さらなる成長を目指しています。
組織体制についてお聞かせください。
中村様 知的財産統括部(以下、「知財部」)ではNDAや共同研究契約など年間約1,000件の技術契約を扱っており、そのうち約3割が英文契約です。約30名の部員のうち、6名がLegalOnのアカウントを保有しています。また、法務部とは定期的に認識合わせを行い、法的見解のズレが生じないよう連携しています。
皆さまのご経歴と、現在の業務内容についても伺えますか。
中村様 知的財産領域に25年以上携わり、これまで特許調査や出願、商標、意匠など幅広く経験を積んできました。日本ゼオンには2年半前に入社し、2026年4月以降は事業支援グループ長として技術契約領域を統括します。
山口様 私は特許事務所を経て2005年に入社しました。知財部で特許業務に約10年携わった後、研究部署を経験し、2025年に知財部へ戻りました。現在は技術契約の審査などを担当しています。契約審査はほぼゼロからのスタートでした。2026年4月以降は事業支援グループに所属し、引き続き技術契約業務を担う予定です。
浅野様 ITベンダーでの営業を経て、3年前に入社しました。現在は企画管理グループで知財領域におけるDXを推進しています。課題のヒアリングからシステム方針の策定、導入や運用までを一貫して担当し、他部署を巻き込んだ業務改善に取り組んでいます。
案件管理の強化を目的に「LegalOn」を導入

「LegalOn」を導入された理由について教えてください。
浅野様 まず、2020年に「LegalForce」を導入しました。当時の課題は人材育成にありました。知財や技術契約の教育には時間がかかる一方、育成した人材が離職すると、その知見が失われてしまうリスクがありました。
そこで、ベテランの知見をいかに可視化し、組織の資産として活用していくかを検討する中で、AIレビュー機能が私たちのニーズに合致していました。具体的には、レビュー結果ややり取りが蓄積されてナレッジとして活用できる点や、抜け漏れの指摘により経験の浅い担当者でも一定の品質を担保できる点などが導入の決め手となりました。
中村様 その後、2025年に「LegalOn」へ移行しましたが、そこで重視したのが案件管理の強化です。従来は依頼者とのやり取りがメールベースだったため、複数案件が並行すると情報が錯綜しやすく、対応の抜け漏れや進捗状況の把握が難しいという課題がありました。特に、案件が増える中でメールが埋もれてしまい、依頼者からの催促で対応遅れに気づくケースや、担当者変更時に過去のやり取りを追うのに時間がかかるといった点が負担となっていました。
「LegalOn」は案件単位で情報や履歴を一元的に管理できるため、このような課題を解消できると考えました。それだけでなく、過去の判断経緯も容易に追えるため、引き継ぎや振り返りにも活用できそうだとも感じました。このような考えから、従来のレビュー機能などは継続しつつ、「マターマネジメント」モジュールを追加して管理体制を強化したのです。
「マターマネジメント」モジュールの案件一覧画面。案件の基本情報を確認しながら、担当者の割り当てやステータス管理、検索・絞り込みが可能。案件の進捗や担当状況を俯瞰的に把握し、チーム全体の業務状況を効率的に管理できます。(※ 画像はイメージです)
契約審査のフローについて伺います。審査依頼はどのように受け付けていますか。
中村様 審査依頼は、専用メールアドレスで受け付けています。技術関連は知財部、それ以外は法務部が担当しますが、依頼者はどちらに送っても問題ありません。内部で案件を振り分けることで、依頼側の負担を減らしています。
浅野様 以前はメールで案件を管理していたため、案件が重なると対応遅れが生じるリスクがありました。現在は依頼が自動で「LegalOn」に起案され、「未着手案件」として一覧表示されます。進捗が可視化されたことで対応の優先順位が明確になり、対応スピードが向上しました。
「レビュー」機能はどのように活用されていますか。
中村様 案件を受け付けた後は、まず「レビュー」にかけてリスクや抜け漏れを一般的な観点で網羅的に確認します。審査担当者は知財実務のプロではありますが、契約審査の経験・スキルにバラツキがあるため、レビュー業務をAIで補完することで、組織として一定の審査品質を維持しています。
山口様 私も契約業務については経験がなく、2025年の配属当初は審査で押さえるべきポイントの理解に苦労しました。しかし、「レビュー」の解説や修正案を参考にすることで効率的にキャッチアップできました。「LegalOn」では指摘事項に対する解説をピンポイントで確認できるだけではなく、過去のやり取りが蓄積されているため、前任者の判断や交渉プロセスまで辿れることが大きな学びとなっています。
独自の審査基準はどのように審査へ反映されていますか。
中村様 知的財産に関わる契約は技術情報を前提とするため、共同出願における持分割合の設定や秘密情報の範囲定義など、一般的な契約実務だけでは判断しきれない論点が多く存在します。これらは案件ごとに技術的背景や貢献度を踏まえた個別判断が求められる領域であり、当社としての判断基準が重要になります。こうした知的財産特有の観点を審査に反映させるため、専用のチェックリストを作成しています。
浅野様 当社では以前から「技能伝承プロジェクト」として、ベテランのノウハウや審査の心構えを形式知化し、若手や中堅が活用できるタスク分析表やチェックリストを作成してきました。現在はその役割を「LegalOn」が担っています。日々のレビューや依頼部門とのやり取りがシステム上に蓄積されることで、背景を含めたナレッジとして活用できるようになりました。
「技能伝承プロジェクト」の中で作成された「タスク分析表」。ベテランの判断基準や着眼点を可視化し、ノウハウを形式知として共有するための取り組みの一例。(※ 日本ゼオン株式会社提供)
山口様 「LegalOn」は、過去の担当者が条項のどの部分に着目し、どう修正したかが記録として残るため、類似案件を審査する際に過去の知見を即座に活かせます。抽象的な表現になりがちなチェックリストとは異なり、実際の契約書と紐付いた形でベテランの「思考のプロセス」を学べるのが大きな利点です。
そのほか、特に便利に活用されている機能はありますか。
中村様 英文契約の審査には、多言語レビューに対応した「ユニバーサルアシスト」を重宝しています。日本語でリスクの指摘や解説が表示され、修正案は英文で提示されるため非常に効率的です。英文契約は特有の言い回しや長文のものが多いので、まずは「ユニバーサルアシスト」で見るべきポイントを洗い出し、そこを重点的に読み込むという使い方をしています。
山口様 契約審査の経験が浅い私にとって、「LegalOnテンプレート」は欠かせないモジュールです。自社ひな形にない種類の契約、珍しい種類の契約のドラフト作成で活用するなど、専門外の案件でも安心して進められます。
「LegalOnテンプレート」では、弁護士監修の契約書や規約など2,000点以上のひな形を利用可能。豊富なテンプレートから目的に合ったひな形をすぐに選べるため、契約書作成の効率化と品質の標準化を同時に実現できます。(※ 画像はイメージです)
業務システムと連携してデータ移行を自動化

「LegalOn」導入後の成果・効果について教えてください。
中村様 2020年と比較して、契約審査の依頼件数は約2割増加しましたが、その中でも8割を超える案件において「5営業日以内にファーストレスポンスを返す」という目標を実現できているのは大きな成果だと感じています。
山口様 誰が何を担当し、今どのような進捗状況にあるかが一目で把握できるため、案件の割り振りや進捗管理が格段にしやすくなりました。進捗の「見える化」は自身のタスク管理においても非常に役立っています。
中村様 個人的には「LegalOnテンプレート」のひな形を、英文表現の参考資料として活用しています。日本人が書く英語はどうしても直訳になりがちなので、ひな形からより自然な言い回しを探しています。最近では、技術系のNDAでサンプルの評価条件を秘密情報の定義に含めるかどうかといった構成に悩む場面があったのですが、ひな形で自然な表現を確認でき、実務上の判断に役立ちました。
運用面で工夫されている点があれば教えてください。
浅野様 現在、業務フロー全体の見直しに取り組んでいます。従来は複数のシステムをまたいで案件情報を登録する必要があり、二重入力や情報の不整合が発生しやすい構造となっていました。そこで、「LegalOn」を起点に情報を一元管理する運用へ見直し、RPA(定型的な操作を自動で実行するソフトウェアロボット)を活用して他システムとのデータ連携を自動化しました。差分情報のみを転記し、人事データとも連携することで、入力負担の軽減とデータ活用の高度化を実現しています。
現在はさらに、蓄積されたデータをダッシュボード化し、業務の偏りをなくすべく、案件の傾向や担当者ごとの負荷を可視化しています。これらのデータは毎月のレポートとして経営層への報告にも活用しており、全社的な意思決定にもつながっています。
RPAで自動連携されたデータをもとに構築された「技術契約案件ダッシュボード」。契約案件の傾向や担当者ごとの負荷を可視化し、業務の最適化やマネジメント判断に活用している。(※ 日本ゼオン株式会社提供)
事業成長に寄り添う知財のプロ集団へ

知的財産統括部の今後のビジョンや目標についてお聞かせください。
浅野様 「LegalOn」の活用によって、業務効率と審査品質は確実に向上しました。今後は、そこで生まれたリソースを、よりビジネスに貢献できる力の強化に充てていきたいと考えています。単に専門性を磨くだけでなく、共同開発パートナーなどの取引先に深く寄り添い、中長期的な事業利益に資する判断ができる組織を目指します。ツールを活用しながら、事業成長に伴走できる知的財産のプロ集団であり続けたいです。
中村様 大規模な組織改革を経て、知財部には経営やビジネスへのさらなる貢献が求められています。研究開発の成果を権利化するだけでなく、そこに戦略的な付加価値を加え、経営の問いにいかに早く応えられるかが重要です。
契約はビジネスの最前線であり、スピードと品質が成否を左右します。「LegalOn」を効果的に活用して即応力を高めることで、加速する市場の変化にしっかり対応し、ビジネスを力強く支える組織でありたいと考えています。
「LegalOn」はどのような企業や組織に適しているとお考えですか。
山口様 技術契約に限らず、法務や契約書に馴染みの薄い方にこそおすすめしたいです。何が必要かを模索する段階でも、AIが「これが適切」と示唆してくれるため、過去の知見を活かした質の高い契約書を作成できます。実力アップを目指す若手や法務経験の乏しい新人にとっても、着実な成長を支えてくれる心強いツールだと思います。
浅野様 技能伝承という観点で非常に高い効果を感じています。当部には知的財産、技術、ICTなど多様な専門性を持つ人材がいますが、それぞれの考え方がナレッジとして蓄積されることで、仕事の進め方に広がりが生まれました。多様な人材が集まる組織において、個々の知見を融合してチーム全体の力を底上げしたい場合に非常に有効な仕組みです。
中村様 担当者が入れ替わっても審査品質の水準を一定に保てる点が大きな魅力です。他者の思考プロセスから学ぶことで、組織全体としても継続的に成長できる環境が整います。定期的な異動がある企業においてもスムーズにキャッチアップでき、高いパフォーマンスを維持し続けたいと考えるなら、これほど心強いツールはありません。
(取材日:2026年3月)※掲載内容は取材当時のものです。