入社直後のマネージャーが直面した“見渡せない組織” 案件管理で実現したアサイン最適化とナレッジ共有
日本板硝子株式会社
法務部 グループリーダー 濵田憲洋 様 法務部 渋谷俊太 様
法務課題:契約審査の判断根拠や過去案件の情報が分散し、必要情報の検索・ノウハウ継承に負荷が発生。案件ごとの担当状況や業務量が見えづらく、適切なアサインや若手育成にも課題
導入経緯:案件受付から契約レビュー、締結までを一元管理できる点を評価。「マターマネジメント」による案件管理の効率化と、AIによるナレッジ提示やレビュー支援を通じた業務標準化を期待して導入
導入効果:案件内容や進捗、過去の担当履歴を可視化。類似案件のレコメンド機能などの活用で担当者の選定や案件振り分けを迅速化し、組織全体でのナレッジ蓄積・活用も実現
活用事例:「レビュー」を若手メンバーの教育ツールとして活用し、指摘理由や修正文案を確認しながら契約審査の論点を習得。「法令遵守チェック」を用いて取適法改正に伴うひな形見直しを実施
世界100カ国以上で建築用・自動車用ガラス、高機能材料を展開する総合ガラスメーカーの日本板硝子株式会社。同社では業務の属人化や案件管理の煩雑さ、若手育成の負荷が課題となっていたことから、2020年にAIレビューサービス「LegalForce」を導入。2026年1月には法務向けProfessional AI「LegalOn」へ移行し、現在は「マターマネジメント」「レビュー」「LegalOnテンプレート」を活用しています。案件の可視化とレビュー品質の標準化を進めることで、同社法務部はより高度な業務に向き合うための「余白」をどのように創出したのか――。濵田憲洋様と渋谷俊太様に、具体的な取り組みを聞きました。
海外売上8割、多様なキャリアが集まる法務部
(写真左から)濵田様、渋谷様
御社の事業内容について教えてください。
濵田様 当社は1918年設立の総合ガラスメーカーです。建築用ガラス、自動車用ガラス、クリエイティブ・テクノロジー(高機能ガラス等)を主力製品とし、高い技術力を強みに世界100カ国以上へ製品を供給しています。売上の約8割を海外市場が占めており、近年は持続可能な社会を支える次世代ガラスの開発にも注力しています。
法務部の体制や業務内容についてお聞かせください。
濵田様 私が所属する法務部は、アジア地域の法務を統括しており、アジア統括部長を含め8名体制です。契約審査や法務相談、契約書の作成などを担っています。業務割合では契約審査が約5割、法務相談が約3割、契約起案・作成などが約2割で、日々幅広い案件に対応しています。
取り扱う契約の種類や審査件数を教えてください。
濵田様 新規の契約審査は年間約500件です。秘密保持契約が中心ですが、業務委託契約や共同研究・共同開発に関する契約も多く扱っています。海外取引が多いため、英文契約の審査も少なくありません。主要3事業すべてにおいて、取り扱う契約件数は増加傾向にあります。
契約業務で特徴的な点はありますか。
濵田様 建築用ガラスは商流が複雑なため、契約で責任範囲を明確にする必要があります。自動車用ガラスでは、取引の規模・継続性が大きく、条件面での丁寧なすり合わせが求められることがあります。高機能ガラスはICT、化粧品、樹脂材料など用途に応じたアレンジが求められることが多く、契約範囲の見極めが重要です。事業ごとにそれぞれ異なる商流や製品特性を理解し、リスク管理と事業推進を両立する点が当社法務の特徴です。
契約審査を担うメンバーの構成にはどのような特徴がありますか。
濵田様 メンバーの法務キャリアはさまざまで、弁護士資格保有者や主任級の経験者、新卒2年目の若手など、多様なメンバーが在籍しています。私は法務一筋でキャリアを積み、約2年前に中途入社しました。現在は全メンバーに「LegalOn」のアカウントを付与し、日常業務で幅広く活用しています。
属人化したナレッジと案件管理が課題に
「LegalOn」導入前はどのような課題を感じていましたか。
濵田様 導入前は、契約審査の背景や判断の根拠となる情報、修正文例などのナレッジが各担当者のPCや共有ドライブに散在し、標準化・可視化できていない状態でした。
過去案件を参照したくても、保管場所を個人の記憶に頼っていたため、資料探しに多くの時間と労力を要し、必要な資料に速やかにアクセスしづらい場面もありました。担当者の退職や異動の際にノウハウの引き継ぎに課題があり、レビュー品質やスピードを安定的に保つための工夫が必要でした。
また、法務経験の浅い若手メンバーの育成も課題でした。多忙な中でOJTやナレッジ共有に十分な時間を割けず、組織全体のレビュー水準を底上げすることが難しい状況でした。
案件管理の面では、どんな苦労がありましたか。
濵田様 私が中途入社後に案件の割り振りを担当した際、メンバーごとの得意分野や業務量が見えず、適切なアサイン判断に苦労しました。Excelで案件管理台帳を作成したものの、手動管理そのものが新たな負担になっていました。
案件受付から締結までを一元管理
「LegalOn」導入を決めた理由をお聞かせください。
濵田様 契約審査では以前から「LegalForce」を利用していたため、同一ベンダーの「LegalOn」への移行は自然な流れでした。最も重視したのは、案件受付からレビュー、締結までを一元管理できる“統合性”です。既存データをスムーズに移行できる点や豊富な導入実績、大手法律事務所監修コンテンツへの信頼感も決め手になりました。Excelでの案件管理は非常に負担だったため、AIによるナレッジ提示や自動レコメンド機能への期待も大きかったですね。トライアル時には「操作感が従来ツールに近く使いやすい」という声もあり、スムーズな定着をイメージできました。
導入・定着にあたって苦労した点はありますか。
濵田様 大きなハードルはありませんでした。AIによる契約レビューについては、以前から「LegalForce」を利用していたため、メンバーにも一定の慣れがあり、学習コストを抑えられました。
案件管理については、浸透に向けて渋谷を中心とした実装メンバーが各機能を事前検証し、運用ルールや注意点を整理しました。ベンダーの支援を受けながらガイドラインを整備したことで、運用開始後も大きな混乱なく定着しています。
導入前後で業務フローはどのように変わりましたか。
濵田様 以前は依頼部門からの案件がメールや電話、口頭など複数経路で届き、担当者がOutlookのフォルダで個別に管理していました。審査に必要な情報を都度確認する必要があり、やり取りに時間を要する場面もありました。
「LegalOn」の導入で大きく変わったのは、案件受付のフローです。バラバラだった窓口を、現在は「マターマネジメント」の案件受付フォームへ一本化するための整備を進めています。
一方、担当者がレビューした後に必要であれば上長の二次レビューを経て依頼部門へ戻す流れや、その後の交渉・原本保管を依頼部門が担う点など、基本的なワークフローは従来運用を踏襲しています。
LegalOn導入前後の契約書審査フローの変化
AIレビューが若手育成の“教科書”に
「LegalOn」導入後、「レビュー」機能はどのように活用していますか。
渋谷様 私は契約審査の実務に携わるようになってまだ日が浅いですが、「レビュー」機能は契約書をアップロードするだけで、リスク指摘だけでなく具体的な修正文案まで提示してくれるので、確認すべきポイントと対応方針を把握しながらレビューを進められて助かっています。
さらに、「なぜ修正が必要なのか」「修正しないとどのようなリスクがあるのか」なども分かりやすく示されるため、指摘箇所の論点を学ぶこともできます。方向性が明確になることで、時間短縮と審査品質向上の両方につながっています。
濵田様 ジュニア層の育成は指導側の負荷も大きいため、テクノロジーで支援したいと考えていました。「LegalOn」のレビュー指摘は、教科書的で基礎を押さえた内容です。若手が実務を通じて学ぶ上で非常に教育効果が高く、自走を促すツールだと感じています。
「レビュー」モジュールのレビュー結果画面。「なぜこの指摘が出ているのか」「どう対応すべきか」を明快に表示するとともに、指摘理由に沿った実務的な「交渉用コメント」までAIが提示。 指摘事項の論点を理解しながら審査を進められます。(※ 画像はイメージです)
「LegalOnテンプレート」の活用方法について教えてください。
渋谷様 経験のない契約類型で一般的な条件を確認したい時に活用しています。有利・不利の立場別にひな形が用意されているため、検討の参考になります。
また、条項の法令違反リスクをアラート表示する「法令遵守チェック」機能も重宝しています。最近では、取適法(旧・下請法)改正に対応したひな形の見直しの際に、リスク箇所の指摘を参考にしながらスムーズに修正できました。
特に実務で役立っている機能はありますか。
濵田様 OCR(光学文字認識)によるPDF読み込みや条文比較の精度が高く、実務で非常に役立っています。類似契約や過去案件を検索できる機能や、AIによる修正文案の提案も便利です。
特に解説機能は、依頼部門へ返却する際のコメント作成時に参考になります。まだまだ使い切れていない機能も多く、今後さらに活用を深めたいですね。
案件の見える化で迅速なアサインを実現
「LegalOn」導入の成果・効果はありましたか。
濵田様 「マターマネジメント」によって案件が可視化され、内容や進捗をすぐ確認できるようになりました。メールやフォルダを探索する手間が減り、着手までのスピードの向上を実感しています。
特に、類似案件を参考案件としてレコメンドしてくれる機能は、適切なアサイン判断に役立っています。過去の担当者が一目でわかるため、案件の振り分けが格段に早くなりました。
さらに、契約審査や法務相談の履歴が蓄積され、組織全体のナレッジ強化にもつながっています。メール運用時代に発生していた見落としやリマインド工数も大幅に削減されました。
若手育成の面では変化はありましたか。
濵田様 メンバー全員が「レビュー」機能を利用することで、経験年数に左右されないレビュー品質の標準化が進みました。先ほど「レビュー」の教育効果について述べましたが、まさに特に若手にとって“契約レビューの教科書”として機能しています。実務を通じた学習効果が高まり、戦力化も確実に早くなったと感じています。
また、自動修正機能や解説コメントのおかげで、ゼロから修正文を考える負担も減り、レビュー時間の短縮も実感しています。
効率化で生まれた“余白”を高付加価値業務へ
法務組織の今後のビジョンや目標を教えてください。
濵田様 「LegalOn」で可視化されたデータを活用し、業務量や案件傾向を分析しながら、リソース配置の最適化や体制強化につなげたいと考えています。今後はテクノロジーの活用で業務負荷を減らし、その分、事業部門の意思決定に向けた法的サポートや取引先との折衝など、“人が担うべき業務”へ注力したいです。
特に若手はテクノロジーを駆使して高い成長曲線を描き、業務のベースを早期にキャッチアップした上で、高度な判断ができる法務人材へ成長してほしいと期待しています。
今後の「LegalOn」に期待していることはありますか。
濵田様 「マターマネジメント」に蓄積されるデータ分析の高度化や、条文修正提案・解説機能のさらなる精度向上に期待しています。また、複数のAIエンジンを用途に応じて使い分ける柔軟なアーキテクチャになれば、アウトプットの質や幅もさらに広がるはずです。若手だけでなく、中堅・ベテラン層を含めた組織全体のスキル向上につながることを期待しています。
どのような企業に「LegalOn」をすすめたいですか。
渋谷様 未経験で法務に配属された方や、他部署から異動してきた方には特におすすめしたいです。特に「レビュー」機能は、契約審査の勘所を初心者にも分かりやすく示してくれるため、実務を進めながら学べます。その後の案件対応もスムーズになりますし、契約審査業務を支える心強いパートナーになると思います。
濵田様 「LegalOn」はモジュール単位で導入できるため、企業規模を問わず活用しやすいサービスです。特に、少人数体制の法務部門や専任担当者がいない企業、ベテランの退職・異動でレビュー基準が揺らいでいる組織には有効だと思います。ツールの審査基準が、“組織としての判断軸”を補完してくれるからです。
また、「LegalOn」は法務部門に“余白”を生み出すツールでもあります。日常業務を効率化することで、事業部門の意思決定に向けた法的サポートや交渉など、テクノロジーでは代替できない高付加価値業務へ時間を振り向けられるようになります。私たちもまさに、その余白を生み出すことを目的に「LegalOn」を活用しています。
(取材日:2026年4月)※掲載内容は取材当時のものです。