AIによる多面的なレビュー視点の提供 高度な法務組織が「LegalOn」を使い続ける理由
日本たばこ産業株式会社
日本マーケット法務担当 課長代理/弁護士 稲垣諒次 様 法務・コンプライアンス統括部 課長代理/弁護士 石川陽菜 様
法務課題:テクノロジー進化への乗り遅れに対する危機感、ナレッジ属人化、ワンオペ体制による心理的負担や見落としリスク
導入経緯:将来を見据えた業務効率化の先行投資として従来サービスを導入、機能優位性と将来性への期待から「LegalOn」へ移行
導入効果:AIがダブルチェック機能を果たし見落とし防止やリスク軽減を実現。過去事例検索の効率化等により、過去参照を要する契約レビュー時間を体感で2〜3割短縮
活用事例:過去事例や特殊条項の横断検索、高精度な英文翻訳による迅速な内容確認、契約リスク検討やドラフト生成に向けたAIアシスタントとの壁打ち
130以上の国と地域で事業を展開する日本たばこ産業株式会社。AIを活用したリーガルサービスの黎明期から「LegalForce」を使用している同社は、2026年1月に法務向けProfessional AI「LegalOn」へ移行し、現在「レビュー」「LegalOnテンプレート」「ユニバーサルアシスト」「LegalOnアシスタント」を活用しています。弁護士資格保有者を複数抱える高度な法務組織において、「LegalOn」はどのように活用され、どんな価値を生み出しているのか──。日本マーケット法務担当の稲垣諒次様と、法務・コンプライアンス統括部の石川陽菜様に話を伺いました。
グローバルに展開するたばこ事業と法務体制
(写真左から)稲垣様、石川様
御社の事業内容を教えてください。
稲垣様 当社は世界130以上の国と地域で製品を販売する、たばこ・食品のグローバル企業です。1985年の民営化以降、「たばこ事業」を中核にビジネスを展開し、近年は新たな成長領域における競争力・収益力の強化に経営資源を集中させています。また、子会社を通じて加工食品事業も展開しており、安定した収益基盤を確立しています。
法務組織の体制について教えてください。
稲垣様 たばこ事業部門の法務は当チームが担当し、コーポレート領域・加工食品事業部門は石川の所属する法務・コンプライアンス統括部が担っています。たばこ事業部門のグローバル化に伴い、2019年以降、当チームのレポートラインも海外子会社のリーガル部門へ集約され、日本も他の海外マーケットと同列に位置づけられる形で、グローバル体制の中に組み込まれています。
石川様 法務・コンプライアンス統括部には4つのチームがあり、新規事業や投資案件の法務支援をはじめ、ガバナンス体制の構築、知的財産管理、内部通報対応、コンプライアンス方針の策定など、幅広い業務をカバーしています。そのうちの法務チームでは、主にたばこ事業以外のコーポレート部門・加工食品事業部門の法務を担当しています。
グループ会社の法務機能とはどのように連携していますか。
石川様 当社の子会社の管理体制は、その会社がどの部門に紐づいているかによって異なります。たとえば加工食品事業の中核である「テーブルマーク」は独自の法務組織を持ち、独立して契約審査等を行っています。相談が必要な場合は、随時連携しながら対応しています。
稲垣様 当チームでは、オンラインショップを運営する「M&Sフォアフロント」や喫煙具等の輸入を行っている「日本たばこアイメックス」など、たばこ事業部門に紐づく子会社について、相談対応を行っています。また、たばこ等の配送を担う「TSネットワーク」は独自の法務組織を持っており、随時連携して対応しています。
組織の規模や取り扱う契約件数についても伺えますか。
稲垣様 たばこ事業部門の法務は11名で、そのうち5名が弁護士(※有資格者含む)です。契約審査は管理職を除くメンバー8名が担当し、直近では年間400~500件、月50~60件程度の契約審査を行っています。
石川様 法務・コンプライアンス統括部は25名体制で、弁護士2名(※有資格者含む)、司法修習修了者が1名在籍しています。事業法務チーム(管理職を除くメンバー5名)が主に契約審査を担当し、月20~30件程度の案件を扱っています。
どのような契約を扱うことが多いですか。また、たばこ事業ならではの特殊な審査観点はありますか。
石川様 業務委託契約やNDAが中心ですが、法務・コンプライアンス統括部では、新規事業に伴う株主間契約や投資事業有限責任組合契約(LPS)などの投資関連契約のほか、役員関係の契約を扱うこともあります。
稲垣様 たばこ事業部門では一般的な契約に加え、分煙施策や喫煙所への協賛契約が多いのが特徴です。たばこに関連する契約については、たばこ事業法などの法令のほか、日本たばこ協会の定める自主規準や社内ルールに沿った規定としています。
AIツールは業務効率化に向けた先行投資
リーガルサービスの黎明期から「LegalForce」をご利用いただいていますがその背景を教えてください。
稲垣様 私の上司がAIツールに関心を持っていたことがきっかけです。人材不足等で業務が逼迫していたわけではありませんが、テクノロジーの進化が非常に速く、「早期に導入しなければ取り残される」という危機感がありました。将来を見据えた業務効率化への先行投資という位置づけで「LegalForce」を導入しました。
「LegalOn」移行時に、他社ツールへの切り替えは検討しましたか。
稲垣様 私たちは法務審査の受付にノーコードの業務管理ツール、文書作成に契約書ドラフト作成支援ツール、契約審査に「LegalForce」を活用し、それぞれの役割を切り分けて運用していました。中でも「LegalForce」の機能優位性を強く感じていたため、後継サービスである「LegalOn」への移行をご提案いただいた際も、他社ツールへの切り替えは検討しませんでした。
契約審査の業務フローとナレッジ管理について教えてください。
稲垣様 たばこ事業部門では、業務管理ツールで案件受付から進捗管理、回答、記録されたデータの集計・活用までを一元的に行っています。依頼部署が専用アプリに案件情報を登録してレコードを作成すると、法務の主担当者が内容を確認して担当者をアサインします。担当者は必要に応じて「LegalOn」でレビューを行い、その結果を業務管理ツールで回答する流れです。
石川様 法務・コンプライアンス統括部では、基本的にはメールやチャットで契約審査依頼や法務相談を受け付け、内部検討後にメール・チャットでフィードバックする運用が中心です。
高い専門性をもつ法務組織での利用に耐えるAIレビューの精度
専門性の高い御社の法務組織において、AIによるレビュー機能が必要とされている具体的な理由は何ですか。
稲垣様 当チームでは、基本的に担当者1名が検討から回答までを担うワンオペレーション体制です。そのため、「LegalOn」が実質的なダブルチェックの役割を果たすことで、見落とし防止や心理的負担の軽減に寄与しています。また、産業廃棄物処理法や建築基準法など、普段あまり扱わない法領域の抜け漏れ防止や、過去の特殊条項の参照にも役立っています。
石川様 私自身、AIのアラートや解説が実務理解の助けになったこともあります。判断根拠が明確なので調べる手間が省け、キャッチアップにも有用でした。
「レビュー」モジュールのAI契約書レビューの結果画面。指摘事項内の[関連情報]をクリックすると、指摘理由や法的背景などの解説を確認することも可能です。(※ 画像はイメージです)
ベテランと若手で、AIレビューの活用方法に違いはありますか。
石川様 ベテランのメンバーは、「条文検索」機能で過去の優れた表現を探したり、抜け漏れがないかの最終確認に使ったりしています。一方、若手メンバーは「LegalOn」を思考の壁打ち相手として使い、契約審査の勘所を身につけるための教育ツールとしても活用しています。
「LegalOn」の条文検索では、契約書・自社ひな形・「LegalOnテンプレート」から条文を横断検索。同義語検索やAND/OR/NOT、各種フィルターで、必要な条文に素早くたどり着けます。(※ 画像はイメージです)
「レビュー」機能以外で、実務において便利だと感じる機能はありますか。
石川様 英文契約に対応する「ユニバーサルアシスト」は、翻訳精度が非常に高いと部内でも評判です。一般的な翻訳ツールと比べても自然な日本語に翻訳されるため、英文契約の内容を迅速に把握する際に大いに役立っています。
「LegalOnテンプレート」機能はどのような場面で活用されていますか。
稲垣様 依頼部署から「契約書の叩き台がほしい」と言われることも多いのですが、契約書をゼロから作成するのは容易ではありません。「LegalOnテンプレート」には豊富なひな形が用意されているため、そういった場面で活用しています。作成の手間が省けるだけでなく、叩き台としての品質も一定以上保証され、その後のレビューも効率化されるため、利用頻度の高い機能です。
石川様 私も、新たな契約書の叩き台が必要な場面で活用しています。完全に一致するものはなくても、参考になる類似のひな形が見つかるケースが多くあります。
法務特化AIで得られた効率化と安心感
法務特化型AIアシスタント「LegalOn アシスタント」の導入経緯と、実際に使ってみた印象を教えてください。
稲垣様 製品説明を受ける中で、「今後さらに進化していく機能である」という期待感があり、早期に導入しました。当初はプロンプトのコツがつかめず試行錯誤もありましたが、慣れるにつれて「このようなケースではどのようなリスクが考えられるか」といった問いに対し、実用的なドラフトや回答を即座に得られる機会も増えてきたように感じています。
汎用的な生成AIと比較して、使用感や信頼性に違いはありますか。
石川様 当社では全社的に汎用的な生成AIも導入していますが、法務に特化したものではありません。そのため、正確性や信頼性という点では「LegalOn」のようなリーガル特化型AIの方が安心して利用できるという印象を持っています。
「LegalOn」導入による定量的な効果はありましたか。
稲垣様 特に「レビュー」の条文検索機能は便利だと感じています。この機能がなかった頃は、自身のローカルフォルダや書籍を一件ずつ手探りで調べていました。その頃と比べると、過去事例等を参照する必要のある契約レビューに要する時間は体感で2〜3割ほど短縮された印象です。
「LegalOn」は組織にとって重要なインフラ
今後のビジョンや目標、将来の展望について教えてください。
稲垣様 たばこ事業を取り巻く環境が年々厳しさを増す中、法務にはより付加価値の高いコア業務へ注力することが求められています。今後はAIを積極的に活用し、定型契約や定常業務といったノンコア業務をどこまで効率化・自動化できるかが重要になると考えています。業務負担を軽減し、法務が本来注力すべき活動へリソースを振り向けられる体制を構築していきたいです。
石川様 私たちの部署も人的リソースに十分な余裕があるわけではありません。いつか手をつけたいと思いながらも着手できていない業務もあるため、AIを積極的に活用して業務効率化を図っていきたいですし、若手が「なぜその判断なのか」を考える力を養うための訓練ツールとしても活用していきたいと考えています。
専門性の高いプロフェッショナル集団であっても、組織としてAIツールを導入し、伴走させるべき理由は何だとお考えですか。
稲垣様 私が2018年に入社した当時は、知識の属人化が大きな課題でした。たばこ関連の特殊な契約について過去事例を調べる際には、その都度先輩の手を止めて教えてもらう必要があり、お互いに大きな時間的ロスが生じていました。
しかし、AIツールの導入によって過去のナレッジが一気に可視化・構造化され、組織として「いつでも知見を引き出せる状態」を実現できたことが最大の価値だと感じています。「AIは不要」と思えるほど高い専門性を備えていたとしても、事業の継続性や時間を有効活用するという全体最適の観点から見れば、「LegalOn」は組織にとって重要なインフラだと考えています。
石川様 日々の業務の中で継続的に確認・更新すべき事項は多岐にわたり、経験豊富なプロフェッショナルであっても、自分の判断を客観的に確認する手段を持つことは重要です。だからこそ、自分を過信することなく、AIを業務のパートナーとして活用することは、法務サービスの質を高める上で非常に有用だと思います。
(取材日:2026年6月)※掲載内容は取材当時のものです。