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下請法とは?適用範囲・義務・禁止行為・2026年改正(取適法)の要点を徹底解説

下請法とは?適用範囲・義務・禁止行為・2026年改正(取適法)の要点を徹底解説
  • 【本記事についてのご案内】
  • 下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、2026年1月1日付で「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」へと改正・改称されました。本記事は主に、改正前の下請法における制度の概要・規定内容・沿革を解説するものです。

下請法は、比較的規模の大きい発注者と中小企業である受注者の取引において、受注者を保護するための法律です。2025年12月31日以前に行われた一定の取引に適用されます(2026年1月1日以降は取適法が適用されます)。契約書面の交付や支払期日の設定、受注者(下請事業者)に対する不当な要求の禁止など、発注者である親事業者が遵守すべきルールが定められています。

本記事では下請法について、対象となる取引の要件や親事業者の義務・禁止行為、現行の取適法で新たに追加されたルール、実際の違反事例、下請事業者が親事業者から不当な行為を受けた場合の対応策などを総合的に解説します。

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阿部 由羅
監修

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所 代表弁護士

西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。 

弁護士紹介:https://abeyura.com/lawyer/

いまさら聞けない!下請法の全体像と実務上のポイント

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目次

下請法とは何か

下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、比較的規模の大きい発注者(親事業者)中小企業である受注者(下請事業者)の取引において、親事業者の下請事業者に対する搾取を防ぎ、下請事業者を保護するための法律です。後述のとおり、2026年1月1日からは取適法が施行されており、下請法はその旧法に当たります。

下請法では、主に親事業者の義務や禁止行為が定められています。その一例として、契約書面の交付や支払期日の設定、受注者(下請事業者)に対する不当な要求の禁止などが挙げられます。違反が発覚した場合には、公正取引委員会が是正勧告を行い、事業者名と違反の内容が公表されるたます。親事業者には、下請事業者との関係性を良好に保ち、公表処分によるレピュテーションの低下を避けるため、下請法の遵守を徹底することが求められます。

参照:公正取引委員会|ポイント解説 下請法

下請法の目的

下請法は、親事業者と下請事業者の間に生じやすい力関係の格差を是正し、下請取引を適正化して下請事業者の利益を保護することを目的としています。

企業規模の小さい下請事業者は、特定の親事業者からの発注に売上の大部分を依存しているケースがよく見られます。この場合、取引を打ち切られることを恐れた下請事業者が、親事業者の理不尽な要求を受け入れざるを得ないといった事態が懸念されます。

このような事態を防ぐため、下請法では親事業者が遵守すべきルールを定め、下請事業者の保護を図っています。

親事業者・下請事業者とは

下請法では、取引の種類および当事者の資本金の額等に応じて適用対象となる取引を定め、その取引における発注者を「親事業者」、受注者を「下請事業者」と呼称しています。

下請法が適用されるかどうかを判定する手順は、次の項目で解説します。

下請法の適用対象

下請法が適用されるかどうかは、「取引の種類」と「当事者の資本金の額または出資の総額」の2つの要素によって判定します。

適用される取引類型

下請法が適用される可能性のある取引の種類は、以下の4つです。

  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託
  4. 役務提供委託

1.製造委託

発注者が他社から製造を請け負い、または自ら使用・消費する物品や部品などの製造を受注者に委託する取引です。製造業の下請け発注などを中心に幅広く見られる取引形態です。

具体例は以下のとおりです。

  • アパレルメーカーが下請企業に対し、自社ブランドの仕様に基づいたシャツの縫製を委託
  • 電子機器メーカーが、設計図に基づいたプリント基板の製造を外部工場に依頼
  • 自動車メーカーが部品製造を専門とする中小企業にエンジン部品の製造を発注

2.修理委託

発注者が他社から請け負った物品の修理、または発注者が自ら使用する物品の修理を受注者に委託する取引です。

具体例は以下のとおりです。

  • 家電量販店が、顧客から預かった洗濯機の修理を専門の修理業者に依頼
  • レンタル会社が自社のレンタル用ノートパソコンの修理を外部業者に委託
  • ホテルが設備のエアコン修理をメーカー系のサービス会社に依頼

3.情報成果物作成委託

発注者が提供し、または他社から作成を請け負った情報成果物(ウェブサイト・記事・動画・プログラム・デザインなど)の作成を受注者に委託する取引です。

具体例は以下のとおりです。

  • 企業が広告代理店にWebサイトのデザインとHTMLコーディングを委託
  • 出版社がフリーのライターに記事の執筆と写真撮影を依頼
  • ゲーム会社が外部のアニメ制作会社にオープニング映像の制作を発注
  • IT企業が外部の開発会社に対し、自社システムやアプリケーションの一部の設計・実装・テストを委託

4.役務提供委託

発注者が行うサービスの提供を、受注者に対して委託する取引です。ただし、建設業を営む者が請け負う建設工事は、役務提供委託には該当しません。

具体例は以下のとおりです。

  • 建物管理会社が、ビル清掃業務を専門業者に委託
  • IT企業が社内ヘルプデスク業務をBPO会社に委託
  • イベント主催者が、警備・受付・会場設営などの運営業務を外部スタッフ派遣会社に依頼
  • 運送事業者が、運送業務を別の企業に委託
  • ビルメンテナンス事業者が、ビルメンテナンス業務を別の企業に委託

<関連記事>ソフトウェア開発(システム開発)委託契約書とは?条項内容を解説

下請法の適用に関する判定フロー【10秒で判定できるフローチャート付き】

下請法が適用されるかどうかは、次の2段階で判定します。

下請法適用判定フローチャート

Step 1:取引の種類の確認

委託業務の内容が、次の4つのいずれかに該当するかどうかを確認します。

  • 製造委託(物品やその半製品・部品・付属品・原材料、またはこれらの製造に用いる金型を製造させる)
  • 修理委託(物品を修理させる)
  • 情報成果物作成委託(ウェブサイト・記事・動画・プログラム・デザインなどを作成させる)
  • 役務提供委託(自社サービスの提供を代行させる)

上記のいずれかに該当しなければ、下請法は適用されません。いずれかに該当する場合はStep 2へ進みます。

Step 2:取引当事者の資本金の額または出資の総額を確認

取引の種類(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)に応じて、取引当事者の資本金の額または出資の総額(=資本金等の額)が下記の基準に該当するかどうかを確認します。

  • 【区分1】
  • 対象となる取引の種類
  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものに限る)
  • 役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものに限る)
  • 適用条件:(a)〜(c)のいずれかに該当すれば下請法を適用
  • (a) 親事業者の資本金等の額が3億円を超えており、かつ下請事業者の資本金等の額が3億円以下
  • (b) 親事業者の資本金等の額が1000万円を超え3億円以下であり、かつ下請事業者の資本金等の額が1000万円以下
  • (c) 親事業者の資本金等の額が1000万円を超えており、かつ下請事業者が個人
  • 【区分2】
  • 対象となる取引の種類
  • 情報成果物作成委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものを除く)
  • 役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものを除く)
  • 適用条件:(a)〜(c)のいずれかに該当すれば下請法を適用
  • (a) 親事業者の資本金等の額が5000万円を超えており、かつ下請事業者の資本金等の額が5000万円以下
  • (b) 親事業者の資本金等の額が1000万円を超え5000万円以下であり、かつ下請事業者の資本金等の額が1000万円以下
  • (c) 親事業者の資本金等の額が1000万円を超えており、かつ下請事業者が個人


取引の種類に応じた(a)~(c)のいずれかに該当する場合は、下請法が適用されます。(a)~(c)のいずれにも該当しない場合は、下請法が適用されません。

自社の取引が下請法の対象と分かったら、「契約書が法令に沿った内容になっているか」を確認する必要があります。LegalOnでは、下請法(現取適法)違反の恐れがある条項をAIが自動で検出し、修正案まで提示します。発注書の記載漏れや不当条項のリスクを、効率よく洗い出せます。詳しくは以下からご確認ください。

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親事業者の義務と禁止行為

ここから親事業者の義務と禁止行為についてそれぞれ詳しく解説します。

親事業者の4つの義務

下請法(現:中小受託取引適正化法)では、親事業者に対して以下4つの義務を課しています。

  1. 発注時の書面交付義務委託業務の内容や報酬の支払条件などを記載した書面(発注書など)を、下請事業者に対して取引の都度、直ちに交付することが義務づけられています。口頭だけで発注し、書面を交付しないと下請法違反になります。
  2. 取引内容を記録した書面の作成・保存義務発注内容を記録した書類(発注書など)を作成し、2年間保存することが義務づけられています。
  3. 下請代金の支払期日を定める義務下請事業者の給付を受領した日、または下請事業者が役務の提供をした日から起算して「60日以内の範囲で、できる限り短い期間内」に支払期日を定め、その期日までに下請代金を支払う必要があります。
  4. 支払期日を過ぎた場合の遅延利息の支払義務支払期日を過ぎて下請代金を支払った場合には、年14.6%の割合による遅延利息の支払いが義務づけられています。

参考:公正取引委員会 親事業者の義務

発注書に記載すべき事項(3条書面)

親事業者は、下請事業者に対して発注を行う際に、発注内容を記載した「3条書面」と呼ばれる文書を交付しなければなりません(第3条第1項)。3条書面の交付を怠った場合、親事業者は50万円以下の罰金に処される可能性があります(第10条第1号)。

  1. 親事業者および下請事業者の商号、名称など
  2. 発注日
  3. 給付の内容(製品仕様、数量など)
  4. 納期(役務提供の場合は提供期日・期間)
  5. 納入場所
  6. 検査完了期日(検査を行う場合)
  7. 下請代金の額
  8. 支払期日
  9. 手形の金額と満期(手形を交付する場合)
  10. 金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日( 一括決済方式で支払う場合)
  11. 電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日(電子記録債権で支払う場合)
  12. 原材料等を有償支給する場合、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法

上記の事項をすべて記載した書面を、下請事業者に交付する必要があります。

注意点

正当な理由により一部の事項を発注時に記載できない場合は、まず記載可能な内容のみを盛り込んだ書面を交付することが認められています。その後、残りの事項については、決定次第速やかに追加の書面を交付する対応が必要です。

このような場合には、当初の書面に「なぜ内容を定められないのか」という理由と、「いつまでに定める予定か」という日付の記載が求められます。

なお、3条書面には決まった様式があるわけではありません。ただし、すべての必要事項を過不足なく記載することが必要です。

親事業者の11の禁止行為

親事業者が下請事業者に対して不当な要求をすることなどを防止するため、親事業者による以下の11の行為が禁止されています。

  1. 受領拒否(第4条第1項第1号)下請事業者が適切に納品した成果物について、不当に受け取りを拒否してはなりません。
  2. 下請け代金の支払遅延(第4条第1項第2号)合意された支払期日(遅くとも給付受領日・役務提供日から60日以内)までに下請代金を支払わないと、下請法違反となります。納品検査(検収)が済んでいるか否かにかかわらず、60日以内の支払期日までに下請代金を支払わなければなりません。
  3. 下請代金の減額(第1項第3号)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、一方的に下請代金を減らしてはなりません。「協賛金」「値引き」「端数切り」などと称して減額したり、原材料価格の下落を理由に一方的に減額したりすることは下請法違反となります。下請事業者の同意を得ていても認められません。
  4. 返品(第4条第1項第4号)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、一方的に下請代金を減らしてはなりません。「協賛金」「値引き」「端数切り」などと称して減額したり、原材料価格の下落を理由に一方的に減額したりすることは下請法違反となります。下請事業者の同意を得ていても認められません。
  5. 買いたたき(第4条第1項第5号)一般的な相場よりも不当に安い下請代金を定めてはなりません。
  6. 購入・利用強制(第4条第1項第6号)正当な理由がないのに、特定の原材料や機器などの物品を強制的に購入させたり、サービスを強制的に利用させたりしてはなりません。
  7. 報復措置(第4条第1項第7号)下請事業者が公正取引委員会や中小企業庁長官に対して通報したことに対して、次回以降の発注を減らす・止めるなどの報復措置をとってはなりません。
  8. 有償支給原材料等の対価の早期決済(第4条第2項第1号)有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた成果物に対する下請代金の支払期日より前に支払わせて、下請事業者の利益を不当に害してはなりません。
  9. 割引困難な手形の交付(第4条第2項第2号)下請代金の支払いにつき、支払期日までに割引を受けることが困難な手形を交付して、下請事業者の利益を不当に害してはなりません。
  10. 不当な経済上の利益の提供要請(第4条第2項第3号)接待、寄付、値引き、協賛金などを不当に要求して、下請事業者の利益を害してはなりません。
  11. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第4条第2項第4号)下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、成果物の仕様変更や再作成などを強要して、下請事業者の利益を不当に害してはなりません。

参考:公正取引委員会 親事業者の禁止行為

【2026年施行】改正下請法(取適法)のポイント

2026年1月1日から、下請法に代わる取適法が施行されました。取適法では、従来の取適法にはなかった新たなルールが追加されており、特に他社に対して業務を発注する企業は適切に対応することが求められます。

本章では現行法である取適法について、下請法からの主な変更点をわかりやすく解説します。

参照:公正取引委員会|下請法・下請振興法改正法案の概要

1.法律名称・用語の見直し

改正後の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」であり、「取適法」「中小受託取引適正化法」と呼ばれます。法令名称の変更には、発注者と受注者が対等な関係にあることを念頭に、法律の射程をより正確に表現する狙いがあります。

また、これに伴い「親事業者/下請事業者」という上下関係を含意する用語は、「委託事業者/中小受託事業者」という表現に置き換えられました。社内規程や研修資料などを作成する際には、今後は新しい用語を使用する必要があります。

主な名称・用語の変更は以下の通りです。

  • 改正前:下請代金支払遅延等防止法
  • 改正後:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
  • 改正前:親事業者
  • 改正後:委託事業者
  • 改正前:下請事業者
  • 改正後:中小受託事業者
  • 改正前:下請代金
  • 改正後:製造委託等代金

2.従業員数基準の導入

従来の下請法では、当事者の資本金等の額によって適用の有無が判定されていました。取適法では、資本金等の額に加えて「従業員数」も適用判定の基準として追加されました

次の従業員数基準を満たす場合は、当事者の資本金等の額にかかわらず取適法が適用されます。

  • 【区分1】
  • 対象となる取引の種類
  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものに限る)
  • 役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものに限る)
  • 常時使用する従業員数
  • 委託事業者が300人を超え、かつ中小受託事業者が300人以下
  • 【区分2】
  • 対象となる取引の種類
  • 情報成果物作成委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものを除く)
  • 役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管および情報処理に係るものを除く)
  • 常時使用する従業員数
  • 委託事業者が100人を超え、かつ中小受託事業者が100人以下


参考:下請法・下請振興法改正法の概要|中小企業庁

この改正により、資本金は少額でも従業員数が多い企業は、新たに委託事業者として取適法の適用を受ける可能性があります。これまで下請法の適用を受けていなかった企業も、取適法の対象となるかどうかを確認しましょう。

3.特定運送委託の追加

取適法の対象となる取引の類型として、新たに「特定運送委託」が追加されました。

特定運送委託は、荷主が販売しまたは製造・修理を他社から請け負った物品や、他社から作成を請け負った情報成果物が記録された媒体などにつき、取引の相手方に対する運送を委託する取引です。たとえば、受注生産した製品や修理が完了した預かり品の運送を委託することが特定運送委託に当たります。

運送業務は原則として下請法の適用外とされていましたが、取適法では新たに適用対象となったため、運送業界にとっては大きな実務インパクトがあります。

荷主企業は、取引内容が「特定運送委託」に該当するか、および資本金等の額や従業員数の要件を満たすかどうかを早急に洗い出し、取適法が適用される場合はその遵守に努める必要があります。

4.製造委託等代金の支払方法に関する規制強化

従来の下請法では下請代金の手形払いが許容されていましたが、取適法では、手形払いが一律禁止となりました。電子記録債権や一括決済方式等、ファクタリングについても、支払期日までに製造等委託代金相当額を受け取ることが困難な場合は規制対象となります。

特に、長期手形での支払いを前提にしてきた業界では、現金振込や短期決済手段への移行が必須になります。既存契約に手形払い条項が含まれている場合は、早急に見直しを行ってください。

5.価格交渉義務の明文化

中小受託事業者が代金の額について協議を求めたにもかかわらず、委託事業者がそれに応じないことにより、中小受託事業者の利益を不当に害する行為が禁止されました。

中小受託事業者からの値上げ要請や費用転嫁の相談があれば、委託事業者は誠実に協議に応じ、合理的な説明責任を果たさなければなりません。

6.執行体制の強化

取適法違反を取り締まるための執行体制も強化されました。

下請法では公正取引委員会と中小企業庁長官に与えられていた是正指導や勧告の権限が、取適法では事業所管省庁の主務大臣(事業所管大臣)にも与えられました。執行体制の強化によって違反を指摘される可能性が高まったため、企業としてはいっそう取適法の遵守を徹底することが求められます。

改正下請法(取適法)対応の必須事項チェックリスト【2026年施行】

  • 1. 法律名称・用語対応
  • 社内規程・マニュアル・研修資料などの表記を新用語に統一したか
  • 2. 適用の有無の判定体制
  • 自社および取引先の資本金等の額を把握しているか
  • 自社および取引先の常時使用する従業員数を把握しているか
  • 発注時に「資本金基準」と「従業員数基準」の両方で判定できるフローを整備したか
  • 従業員数基準により、新たに取適法の対象となる取引がないか洗い出したか
  • 3. 支払条件の見直し
  • 支払手段が「手形・電子記録債権・ファクタリング」になっていないか点検したか
  • 振込・即時決済など、現金同等の確実な支払手段に移行できているか
  • 4. 物流・運送関連取引
  • 特定運送委託に当たる取引を洗い出したか
  • 特定運送委託に当たる取引につき、資本金基準と従業員数基準に照らして、取適法の適用の有無を確認したか
  • 5. 価格交渉・協議対応
  • 中小受託事業者から価格交渉の申入れがあった際の社内対応フローを定めたか
  • 協議記録(メール、議事録、提示資料)を保存するルールを整備したか
  • 価格交渉を拒否・放置することが禁止行為であると社内に周知したか
  • 6. コンプライアンス体制
  • 取適法違反リスクを定期的にチェックする体制を設けたか
  • 違反事例・勧告事例を社内研修に取り入れているか
  • 公正取引委員会や「取引かけこみ寺」などへの相談ルートを社内に周知したか

下請法違反事例から学ぶ実務対応

近年、公正取引委員会は多数の企業に対して下請法(現:取適法)違反の勧告を行っています。ここでは、令和7年に発表された実際の勧告事例の一部を紹介し、企業が注意すべき行動と対応策について検討します。

最近の具体的な違反事例(令和7年勧告事例)

令和7年には、日精樹脂工業株式会社やカヤバ株式会社などが、下請法違反による勧告を受けたことで注目を集めました。両社の事案はいずれも、製品の製造に使用する型等を、長期間使用しないにもかかわらず下請事業者に無償で保管させたというものです。かかる行為により、両社は「自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」により、下請事業者の利益を不当に害したものとして、公正取引委員会から是正勧告を受けました。

また株式会社シャトレーゼは、下請事業者が納入した商品の受領を不当に拒否したことや、未受領の商品を無償で長期間にわたり保管させたことを理由に、公正取引委員会から是正勧告を受けました。

参照:公正取引委員会|日精樹脂工業株式会社に対する勧告について

参照:公正取引委員会|カヤバ株式会社に対する勧告について

参照:公正取引委員会|株式会社シャトレーゼに対する勧告について

違反を回避するための実務的チェックポイント

違反を未然に防ぐには、契約内容・取引履歴・代金支払い状況について定期的な内部確認を実施することが重要です。発注書や納入物の受領記録などをの作成・保存しておけば、取引状況を検証する際に役立ちます。

特に近年では、使用する具体的な予定がない型等を、下請事業者に無償で保管させる行為の取り締まりが厳しく行われています。下請事業者に対する発注の予定がないときは、保管させている型等を速やかに回収しましょう。

下請法違反に対する取り締まり

親事業者に下請法(現:取適法)違反の疑いがある場合は、公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁による調査の対象となります。

調査の結果によっては、勧告を受けたうえで事業者名や違反内容が公表されるほか、刑事罰が科される可能性もあります。

立入検査

公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁では、親事業者と下請事業者の双方に対して不定期に調査を実施しています。下請取引が適正に行われているか、確認することが目的の調査です。

必要に応じて、親事業者の事業所への立入検査が行われ、取引記録の提出などを求められる場合もあります。

違反企業名の公表

公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁では、親事業者と下請事業者の双方に対して不定期に調査を実施しています。下請取引が適正に行われているか、確認することが目的の調査です。

必要に応じて、親事業者の事業所への立入検査が行われ、取引記録の提出などを求められる場合もあります。

罰金

下請法(現:取適法)に違反した場合、同法第10条に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

罰金の対象となる主な違反行為の例:

  • 下請法第3条:下請事業者への書面交付義務を怠った場合
  • 下請法第5条:取引に関する書類の作成・保存を行わなかった、または虚偽の記録を作成した場合
  • 下請法第11条:公正取引委員会・中小企業庁長官・事業所管大臣から報告を求められた際に、報告を拒否もしくは虚偽の報告をした場合、または公正取引委員会・中小企業庁長官・事業所管大臣の検査を拒否・妨害・忌避した場合

さらに、下請法違反により下請事業者に損害が発生した場合には、損害賠償請求などの民事上のトラブルに発展する可能性もあります。

下請取引の適正化のためのポイント

下請法(現:取適法)について、確認不足や理解不足が原因で気付かないうちに違反してしまうことがないよう、以下の対応に努めることをおすすめします。

取引条件の定期的な見直し

下請取引は長期にわたることが多いため、定期的に取引条件を見直すことが重要です。以下のポイントを意識し、必要に応じて条件を更新しましょう。

  • 市場価格の変動に応じた下請代金の見直し
  • 業務内容や納期の変更に対応した契約内容の更新
  • 新たな法規制や業界標準への適合

フィードバックの収集

定期的な取引見直しを行う際は、下請事業者からフィードバックを収集することも重要です。フィードバックを得る方法としては、次の例が挙げられます。

  • 定期的なミーティングの開催
  • アンケート調査の実施
  • 下請事業者との個別面談

上記を通じ、下請事業者の意見を反映した公正な取引条件を維持できます。

下請事業者側が知っておくべき対処法

親事業者から不当な取扱いを受けた下請事業者が泣き寝入りを避けるため、とるべき具体的な行動や相談先、証拠保全のポイントについて解説します。

違反行為を受けた場合の具体的な対応方法

  • 発注書が交付されない
  • 納入後長期間にわたって下請代金が支払われない
  • 下請代金が一方的に減額される
  • 納期が一方的に変更される

上記のような不当行為を受けた場合、親事業者に対する抗議を検討しましょう。下請法上の根拠を示し、文書で抗議することをお勧めします。

親事業者が抗議を聞き入れないときは、次の項目で挙げる窓口への相談や通報を検討してください。

公正取引委員会等への相談窓口の活用法

親事業者による下請法(現:取適法)違反につき、下請事業者が自力で対応しきれないときは、次の窓口への相談や通報を行いましょう。

公正取引委員会

中小企業庁

・事業所管省庁の窓口

取引かけこみ寺(中小企業庁の委託事業)

公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の窓口では、違反事業者の取り締まりに役立つ情報の提供を受け付けています。親事業者に対する処分を求めたいなら、これらの窓口に通報するとよいでしょう。

「取引かけこみ寺」では、専門の相談員や弁護士からアドバイスを受けられます。親事業者との取引に関して、自社がどのように振る舞うべきかを相談したいときは、取引かけこみ寺に問い合わせてみましょう。

被害を受けた際の証拠保存と法的措置

下請法(現:取適法)違反について公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁に対して通報する際には、次に挙げるような客観的な証拠を提出することが重要です。

  • 契約書や発注書
  • メールのやり取り
  • 納品記録
  • 録音データ

また、親事業者に対して損害賠償請求を行う際にも、下請法違反に関する客観的な証拠が役立ちます。必要に応じて弁護士と連携し、証拠の収集・整理や主張する内容の検討を行いましょう。

下請法の対応を、仕組みで解決しよう

下請法は2026年から取適法へと改正され、適用範囲が拡大されるとともに、委託事業者(旧:親事業者)が遵守すべきルールも厳しくなりました。発注書への必要事項の記載、代金の支払手段の見直し、価格交渉を求められた場合の対処など、対応すべき実務は多岐にわたります。

こうした対応を担当者の知識や記憶だけに頼っていると、見落としや属人化のリスクが生じます。LegalOnなら、下請法(現:取適法)違反の恐れがある契約書の条項をAIが自動検出し、修正案まで提示。改正内容にも随時対応しているため、法改正後も安心して使い続けられます。ぜひご確認ください。

下請法についてのよくある質問(FAQ)

Q1. 下請法と「取適法」(中小受託取引適正化法)は何が違う?いつから?

A. 2026年1月1日施行の改正で、法律名が「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(通称:取適法)」に変わり、用語も「親事業者/下請事業者」→「委託事業者/中小受託事業者」などと刷新されました。あわせて適用対象となる取引の拡大、委託事業者(発注者)の禁止行為の見直し、執行体制の強化などの改正が行われました。

出典:日本取引所協会|2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!

Q2. フリーランスや個人事業主も下請法(現:取適法)による保護対象?

A. 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のいずれかに該当し、資本金基準を満たしていれば、フリーランスなどの個人事業主も下請事業者として保護されます。また取適法では、特定運送委託が対象取引に追加されたほか、従業員数要件を満たした場合も適用対象とされました。詳しくは本記事の「【2026年施行】改正下請法(取適法)のポイント」を参照してください。

Q3. 手形払いや電子記録債権、ファクタリングは使える?

A. 下請法では代金の手形払いが許容されていましたが、2026年1月1日から施行された取適法では、手形払いが一律禁止されました。電子記録債権やファクタリングによる支払いについても、現金同等性が確保されていない場合は違法となります。

出典:日本取引所協会|2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!

Q4. 発注書は“電子交付”でもOK?

A. 2026年1月1日から施行された取適法では、中小受託事業者(受託者)側の承諾の有無にかかわらず、メール等の電磁的方法で発注書面を交付することができるようになりました(改正事項)。

出典:日本取引所協会|2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!

Q5. 下請法(現:取適法)に関する相談先はどこ?

A. 公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の窓口や「取引かけこみ寺」などに相談してください。

参照:日本取引所協会|よくある質問コーナー(下請法)

Legal AI Insight 編集部
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株式会社LegalOn Technologiesが運営する法務実務メディア「Legal AI Insight」編集部。法務特化型AI「LegalOn」の開発・提供で培った知見をもとに、法務AIの活用・法務業務の効率化・法務DXの最前線を、現場の実務に役立つ視点で発信しています。

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